約 1,746,312 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9248.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第七十四話「闇をけちらせ」 吸血魔獣キュラノス 石化魔獣ガーゴルゴン 古代暴獣ゴルメデ 登場 サビエラ村を襲う吸血鬼の脅威。それを調べるタバサとミラーの前に現れたのは、こうもり怪獣バットンだった。 しかしこのバットンは彼らの目をそらす身代わりでしかなく、真犯人は別にいたのだった。 その正体はいたいけな少女の振りをして村に紛れ込んでいた吸血鬼エルザと、彼女に協力する 美しき夜の種族、そしてその神である吸血魔獣キュラノスであった! 一時は彼らの罠に嵌まってしまった タバサたちだが、タバサの機転により闇を脱してミラーナイトが大変身! 光の力を以て暗闇の化身、 キュラノスを討ち取る! ……そう思われたが、キュラノスは奥の手を用意していた。その名は恐るべき石化魔獣ガーゴルゴン! ミラーナイトに二大魔獣の邪悪な牙が迫り来る! 「キュオォ――――――――!」 キュラノスとガーゴルゴンに挟まれた状態のミラーナイト。まずはキュラノスが翼を広げ、 空中から襲いかかってきた。 『むッ!』 滑空して鋭い牙を突き立てようとしてくるキュラノスから無駄のない動きで逃れたミラーナイトは、 振り向きざまにミラーナイフを放って反撃した。 「キュオォ――――――――!」 ミラーナイフの直撃を受けたキュラノスはバランスを崩し、よろめきながら着地した。 すかさずミラーナイトは追撃を掛けようとしたが、 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 今度はガーゴルゴンの攻撃の番だった。ガーゴルゴンは両肩から伸びた蛇の首から稲妻状の光線を発射! その光線の威力はかなり高く、ミラーナイトの周囲を爆発で包んだ。 『くぅッ!』 さすがにひるんでキュラノスへの追撃を中断させられたミラーナイトだが、代わりにガーゴルゴンへと ミラーナイフを飛ばした。 しかしその瞬間にガーゴルゴンは自分の足元に光線を撃ち込んだ。光線の起こす爆発が土砂を巻き上げ、 ミラーナイフはそれに阻まれてしまった。 『何ッ!? 怪獣があんな身の守り方を!』 衝撃を受けるミラーナイト。今の防御の手段はかなり知能が高くなければ実行できないだろう。 少なくとも、ただの怪獣のレベルを大きく逸脱している。これが『魔獣』と呼ばれる大怪獣の実力の一端か。 ガーゴルゴンに構っている内に、ミラーナイトにキュラノスが殴り掛かってきた。 「キュオォ――――――――!」 『ぐわッ!』 相手の怪力を受け切れずに殴り飛ばされるミラーナイト。キュラノスの攻撃手段は打撃のみと 極めて単純だが、闇の力を持つ『魔獣』と称される怪獣だけあり、パワーはバットンを超越するレベルであった。 『くッ……この二体を同時に相手取るのは苦しい……!』 油断ならない力の『魔獣』の二体掛かりの脅威のほどを、ミラーナイトはこの短時間にはっきりと理解した。 が、闇の効力は未だにこの周辺を覆っており、テレパシーで応援を呼ぶことは出来なかった。どうにかして、 一人でこの二体を倒さなければならない。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 前衛はキュラノスに任せ、ガーゴルゴンは光線を乱射して砲台の役割を果たす。そしてその攻撃は ミラーナイトを大いに苦しませ、彼の動きを封じる。 『ぐッ、うぅッ……!』 動きを封じられるということは、ミラーナイトは己の武器の一つ、流れるような妙技を 使えないということだ。自分の長所を潰されては、戦いはとても厳しいものとなる。 そこでミラーナイトは即席の鏡を作り出してガーゴルゴンの光線を反射させて自分に 食らわせる作戦に出た。が、 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 そうするとガーゴルゴンは肩の蛇を伸ばし、その牙で鏡を粉砕してしまった。 『うッ! 私の戦法が見破られている……!』 どうやらミラーナイトをバットンと戦わせたのは、吸血鬼事件の犯人の偽装だけが目的でなかったようだ。 バットンとの戦いを通してミラーナイトの戦い方を観察し、その対策を講じたようである。これはパワーより 技を重要とするミラーナイトにとってかなりの痛手だ。技を見切られるのは、相当な不利である! 蛇の首はそのままミラーナイトの足元まで素早く伸び、足首に食らいついた! 『うわぁぁッ!』 噛まれたまま引き倒されるミラーナイト。どうにか蛇を振り払って起き上がるが……その時には キュラノスが背後に回り込んでいた! 「キュオォ――――――――!」 ミラーナイトが逃げる間もなく、キュラノスは彼の肩に長い牙を突き立てる! 『ぐわぁぁぁぁぁッ!』 皮膚を破られた上に吸血攻撃を食らい、エネルギーを奪い取られてしまうミラーナイト。 キュラノスが放した時には、力を失いばったりと倒れ込んだ。 だがここからがキュラノスの吸血能力の恐るべき本領なのだ! 「キュオォ――――――――!」 キュラノスの両目が先ほどのように赤く怪しく光る。するとミラーナイトの身体が、見えない糸で 引っ張られたかのように不自然に起き上がった。 更にキュラノスが翼を翻すと、一人で勝手に転倒した。 『こ、これは……! 身体の自由が、効かない……!?』 そう、今のミラーナイトの身体は自分の意思で動いていない。これがキュラノスの特殊能力。 血を吸われたものは、身体の自由をキュラノスに奪われてしまうのだ! ミラーナイトはその後も何度も転倒させられ、自分で自分の身体を傷つけていく。 『うぐあッ……! このままではまずい……!』 そう思うミラーナイトであったが、身体は指先一本たりとも自力で動かすことが出来なくなっている。 完全にキュラノスに支配されてしまったのだ。こんな状態では、反撃することすら不可能! 「お姉さま、あのままじゃやられちゃうのね!」 ミラーナイトの絶体絶命の危機に、シルフィードがたまらずに声を荒げた。タバサも静かに 焦りを覚えるが、今の自分たちも手一杯の状態だ。 何せ、エルザが執拗に追い回してくれている。空に逃れているとはいえ、一瞬でも気を抜いたら またしても枝に捕まってしまうだろう。 こちらからも攻撃するが、氷の槍はことごとく先住魔法に防がれてしまう。やはり発動スピードが 段違いで、エルザを出し抜くことが出来ない。 「おねえちゃん、もうあきらめなよ。今更どうあがいたところで、助かる道はないんだよ。 おとなしくおねえちゃんも吸血鬼になった方が身のためだよ」 エルザは余裕綽々でそんなことを告げてきた。夜の種族の男もまた嘲笑を浮かべて、もう勝ったつもりでいる。 「エルザさんの言う通り。あの光の者の命も、間もなくおしまいです。我が神が、眷属に命令を 下されました。ご覧なさい、光の者が石と化す、その瞬間を!」 キュラノスに操られて、ミラーナイトは金縛りを食らって立ち尽くした。そしてガーゴルゴンに動きが起こる。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 ふたまたの尻尾の先端をガラガラと鳴らしながら、中央の首の口がバックリと開かれる。 その中にあるのは……。 「うげッ!? あんなところに目玉があるのね!?」 眼球がないと思われたガーゴルゴンだが、その実口の中に一つ目が存在していた! この異常な 肉体構造には、さすがのタバサも度肝を抜かれた。 しかもガーゴルゴンはただ目玉を露出したのではない。その部分に怪光が集まっていく! エネルギーチャージをしているのだ! 目玉から発射される光線こそが、ガーゴルゴンの最大の武器。当たったものは全て石へと変わってしまう、 強力な石化光線! 石になってしまえば、ミラーナイトは本当におしまいだ! それなのに、彼を助けられる者は誰もいない! 「ふははははははッ! 光の者も、これで確実に命の終わりです!」 夜の種族の男が勝利を確信して高笑いした。 「ああぁッ! もう駄目なのねぇ!」 シルフィードは思わず固く目を瞑ってしまった。この先に起こる惨劇を、見ていられなかった。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 そしてとうとうガーゴルゴンが、超弩級の石化光線を発射した! 光線は地面をなぞりながら伸びていく! ……が、その照準の先にいたのは何と、ミラーナイトではなかった! 「キュオォ――――――――!?」 キュラノスだッ! 「……何ぃッ!?」 愕然とする夜の種族の男。エルザもまた、タバサでさえ言葉を失うほど驚いた。これは一体 どういうことなのだ!? 油断したところに光線の直撃をもらったキュラノスは、たちまちの内に石に変わり果てた。 それによりミラーナイトにかかった魔力が途切れ、彼は糸が切れたように崩れ落ちた。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 しかもガーゴルゴンの石化光線はそれで止まらず、タバサたちの方にまで飛んできた! 「ッ!!」 タバサは慌ててシルフィードの首を引っ張り、緊急回避をさせた。空を飛んでいることもあって ギリギリのところで光線をかわしたが、夜の種族の男とエルザは光線の中に呑まれた。 「ああああああ――!?」 二人は悲鳴を最後まで唱えることも出来ずに、石像に変わり果てた。 『な、何故味方を撃ったんだ……!?』 ミラーナイトもこの展開を理解できずにつぶやいた。そうすると、ガーゴルゴンから特殊な 高周波が発せられた。 その高周波には、確かな意味が乗せられていた。 『愚カナ。ワレハ何者ニモ支配サレナイ。ワレハ常ニ食ラウ側ダ』 『!!』 ガーゴルゴンからの言葉で、ミラーナイトは理解した。ガーゴルゴンを操り利用していたように 見えたキュラノスだが、実際はキュラノスの方が利用されていたのだ! ガーゴルゴンは石にしたキュラノスからエネルギーを全て吸い取った後、稲妻状の破壊光線を放って 用済みになったキュラノスを粉々に破壊した。魔獣キュラノスの、あまりにあっけない最期であった。 キュラノスが破壊されると同時に、夜の種族の男もまた力が失われたのか、砂となって風に吹かれていった。 『コレダケデハ足リヌ。ワレハコノ星ノ全テノえねるぎーヲ食ライ尽クス! マズハオマエカラダ!』 仲間割れでキュラノスを葬ったガーゴルゴンだが、結局はミラーナイトにもとどめを刺そうと 襲いかかってきた! ミラーナイトは立ち向かおうとするが……。 『ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』 ガーゴルゴンの光線の猛攻にまるで敵わず、嬲られてしまう! 既にキュラノスにエネルギーを 吸い取られてボロボロに痛めつけられたので、ただでさえ強いのにエネルギーを食らって更に力を強めた ガーゴルゴンに刃向かえるだけの力が残っているはずがなかったのだ。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 ミラーナイトが最早ろくに戦えないのをいいことに、ガーゴルゴンは蛇の首で捕らえて 引き寄せると、彼にも石化光線を浴びせた! 『うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』 ああ、何ということ。ミラーナイトも下半身から徐々に石化していく! このままでは、 ガーゴルゴンによってハルケギニア中が石にされて死滅してしまう! 「あぁぁぁ! どうしたらいいのね!?」 ミラーナイトの大ピンチに激しく取り乱すシルフィード。しかし一方でタバサは、ある大きな 賭けに出ることにした。シルフィードに短く囁いて命令する。 「えええええッ!? そ、そんな怖いこと出来ないのね!」 シルフィードは嫌がったが、タバサは有無を言わせぬ無言のプレッシャーを放った。 「うぅ、分かったのね。どうせ、このままじゃシルフィたちも終わりなのね。こうなったら自棄なのねーッ!!」 シルフィードは弾かれたように、ガーゴルゴンの顔面めがけ一直線に向かっていく! 命がけの全力により、その速度は弾丸と見間違えるほどだ。 振り下ろされないように全力でしがみつきながら、タバサは十分に接近したところで用意していた 呪文を解き放った! 「『ウィンディ・アイシクル』!」 慣性の乗った氷の槍が超速で飛び……ガーゴルゴンの目玉に突き刺さった! 彼女はガーゴルゴンの 目玉が、一番の武器であると同時に弱点であると踏んだのだ。 「アァオ――――――――ッ!?」 ガーゴルゴンはたまらずにもがき苦しみ、ミラーナイトの拘束を解いた。そのミラーナイトの 石化も解かれ、元の肉体に戻っていく。 タバサの決死の読みは的中した。一つ目はガーゴルゴンの武器と同時に急所であり、ここに損傷を 受けると石化させたものが元に戻るという副作用まであるのだった。 『あ、危ないところだった……。タバサさん、ありがとうございます……!』 感謝するミラーナイトだったが、しかしまだ助かったと思うのは早計だった。 何故なら、ガーゴルゴンの細胞は急速に再生して目玉が復活しつつあるからだ。武器も兼ねた急所なので、 ここの再生速度は異常に早いのだった。 『!! 一気に勝負を決めないといけませんね……!』 ミラーナイトの方も、残っている力はわずか。一発勝負を決めに行く他はない! 『行くぞッ! はぁぁッ!』 ガーゴルゴンが攻撃を再開するより早く、ミラーナイトは足元にミラーナイフを一発撃ち込んで 土埃を巻き上げた。その煙幕で己の姿をガーゴルゴンから隠す。 「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」 当然ミラーナイトの行方を捜して辺りを見回すガーゴルゴン。目玉も既に再生を完了し、 今度こそミラーナイトを完全な石にしてやろうとしている。 その時に、ミラーナイトが背後から飛びかかってきた! だが蛇の首が伸びて、ミラーナイトに一撃を加える。それで彼の姿が粉砕された。鏡の分身だったのだ。 『しまったッ!』 ミラーナイトは別方向から飛びかかろうとしていた。ガーゴルゴンはすかさずそちらへ石化光線を発射! 動揺したミラーナイトはかわせない……。 そう思われたが、光線はミラーナイトの姿に当たると反射されてガーゴルゴン自身に戻ってきた! 「!!?」 自分の光線を食らって石になっていくガーゴルゴン。最後に見た光景は、正面のミラーナイトの 姿が割れるところだった。 本物のミラーナイトは、やはりガーゴルゴンの背後にいた! 実は最初の鏡の分身は見破られることを見越して、 二つの分身を用意していたのだ。動揺した振りをして油断を誘い、本物は最初の鏡の後ろに隠れていたのである。 『これが最後……! シルバークロスッ!』 完全に石化したガーゴルゴンへ十字の光刃を放つミラーナイト。その刃がガーゴルゴンを分割し、 ガーゴルゴンは粉微塵となって砕け散った。 一時はギリギリまで追い詰められたが、タバサの決死の助力のお陰で、どうにか逆転勝利を収めた ミラーナイト。サビエラ村を覆う闇も、これで本当に払われた。 だが、まだ一つ、どうにかしなければいけないことがある。それがこれ……。 「さて……エルザさんの処遇なのですか……」 ミラーとタバサはムラサキヨモギ畑の真ん中で、失神して倒れ込んでいるエルザを見下ろしていた。 ミラーナイトが元に戻ったタイミングで、彼女も石化から解放されていたのだ。だがそのショックのためか、 あれから気を失ったままだった。 「……彼女は、人間の敵。やっぱり、倒さなければ」 タバサはエルザの目が覚めない内にとどめを刺そうとしたが……それをミラーが押しとどめた。 「待って下さい。日頃怪獣退治をしている私ですが……命は出来る限り尊重されるべきです。 彼女は吸血鬼とはいえ、元からこの世界に存在する命。彼女自身には悪意自体もありません。 どうにか、助けられないものでしょうか」 確かに、エルザが人を襲うのはあくまで生きるためだ。人間に悪意があって命を奪う訳ではない。 そこをどうにかして命を奪わないよう教育すれば、エルザを殺す必要もない。 が……大きな問題がある。 「でも、彼女をしつけて考えを改めさせるなんて、無理。吸血鬼の力はとても抑えつけられない」 エルザの思想を正せるだけの力が、タバサにはない。とても面倒なんて見られないのだ。 それはミラーナイトも同様。エルザ一人に構っている時間と余裕は、彼にもないのだ。 「困りましたね……。どうにかエルザさんが死ななくて済む道はないでしょうか……」 悩んだ末に、ミラーナイトはあることを思い出した。 「あッ、そうです」 ……暗い森の中を、一人の若いメイドが、息を切らしながら駆けていた。 その背中を、エルザが追いかけている。小さな少女の姿のエルザだが、その正体は恐るべき吸血鬼。 能力は普通の人間とは比べものにならず、あっという間に追いついて捕まえてしまう。 「い、いや! 放して!」 メイドは必死で抵抗するが、絡みついた枝は彼女のちっぽけな力では振りほどけるものではない。 無駄な抵抗をしている間に、エルザは首筋に向けて牙をちらつかせる。 「さっきあなたが摘んだ苺みたいに食べてあげる」 メイドが絶叫する暇もなく、エルザの牙が柔肌に突き立てられる……! 「グウワアアアアアア!」 ……その寸前に、頭上から怪獣の指が降ってきて、器用にエルザを摘み上げてメイドから引き離した。 「あッ」 エルザはそのまま、自身を持ち上げた怪獣に抱きしめられて捕まった。 エルザを捕獲した怪獣はゴルメデ。以前シャプレー星人にけしかけられてラ・ヴァリエール領に出現し、 暴れようとしたが、カトレアとリドリアスたち怪獣の説得によって鎮静化した。だが帰ろうにも元いた土地の 人間たちに追い立てられてしまったので、不憫に思ったカトレアがそのままラ・ヴァリエール領に 引き取っていたのだった。今ではすっかりと彼女の友達となった。 「はーなーせー」 エルザはジタバタ抵抗するが、いくら吸血鬼とはいえ、巨大怪獣の腕力には抗えない。 先住魔法で枝を操るも、ゴルメデの剛力にはやはり無力だった。ゴルメデは涼しい顔だ。 エルザが捕まったことで、メイドの拘束も自然に解かれた。と、そこにカトレアと ヤマノ=キュリア星人の二人が駆けつけてくる。 「あなた、大丈夫だった? エルザちゃんにも困ったものね。まだやんちゃが抜けなくて」 「は、はい。助けていただきありがとうございます、カトレアお嬢さま」 「エルザ、また人を襲おうとしたね。全くいけない子だ。罰として、今晩はそのままゴルメデに 抱かれたままでいること。さぁゴルメデ、巣に帰りなさい」 「グウワアアアアアア!」 ヤマノに命令された通りに、ゴルメデはエルザを捕まえたまま巣に引き返していった。 これがミラーナイトの考え出した、エルザの助命案である。それは、カトレアたち ラ・ヴァリエール家に預けて更生してもらうこと。怪獣と意思疎通できるほど慈愛の精神 あふれるカトレアならば、吸血鬼と心を通わすことも出来るだろうし、宇宙人と四体もの 怪獣に見張られるこの環境では凶行など出来ようはずもない。 しかしこの現状に、エレオノールは頭を抱えた。 「まさか吸血鬼まで領地に置くなんて……。王宮に知られたら何と言われることかしら……」 「うふふ。今更ですわ、エレオノールお姉さま」 結構な問題のはずだが、カトレアは朗らかに笑うばかりだった。確かに、怪獣を四体も領地に飼っている インパクトには吸血鬼も霞むことだろう。 「エルザちゃんがちゃんといい子になったら、サビエラ村の村長さんという方にもお伝えしてあげましょう」 兎にも角にも、エルザの新しい居場所は見つかった。これから彼女がきちんと更生するかどうか…… それはまだ先のことにはなりそうだが。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1864.html
前ページ次ページテスト空間/ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐ 虚無の曜日、トリステイン魔法学院に帰ってきたタバサは自分の部屋で本を読んでいる。 あの後、発狂寸前のイザベラがタバサに与えられた任務の内容はオーク鬼の大群の討伐であったが、タバサは何もせずに学院に戻っていた。 今頃、タバサの指示に従いギャオス達がオーク鬼達を一匹も残さず骨ごと食い尽くしているだろう。 ギャオスが召喚されてからも、世界の流れに特に変化はなかった。 タバサに与えられる任務の数が激減したり、 平民と二股の決闘を見物していたギャオス達が真似をして学院が半壊したり、 ハルケギニア中の吸血鬼達がどこかへ逃げ出したり、 コルベール先生が実験のためと卵を勝手に持ち出し超音波メスの雨を浴びたり、 ガリアのリュティス魔法学院が謎の巨大鳥の襲撃に会い壊滅したり、 ギャオス達の食べっぷりにマルトーが歓迎したり、 近くの森から生物が消えたり、 他の生徒の使い魔達が失踪する事件が相次いだり、 オスマン氏のセクハラが過激になったり、 ギャオスの群れの総数が200匹を超えたりというようなことはあったが、タバサの日常には変化がなかったため特には問題はない。 サイレントによって周囲で暴れてるギャオスの幼体達の鳴き声を意識から消し、タバサは読書を楽しんでいる。 タバサにとって、この時間は至福のときである。 ―― 始祖ブリミルが、お前の名は何かとお尋ねになると、それは答えた。我が名は ―― 次のページへ進もうとすると、部屋の扉がゆっくりと開かれた。 タバサは侵入者に気付いたが本から目を離さない。 見知らぬ人物が入ってきたら超音波メスで帰ってもらうように指示しているからだ。 しかし、入ってきたのはキュルケであったため、超音波メスは放たれない。 その様子に気づき、タバサはしかたなくサイレントを解く。 「タバサ。今から出かけるから早く支度してちょうだい」 キュルケは小声で話しながらタバサの手から本を取り上げる。 あまり大声で騒ぐと幼体達が暴れだすからだ。 「虚無の曜日」 タバサは短くぼそっとした声で自分の都合を友人に述べ、それで十分であると言わんばかりにキュルケから本を取り返そうと手を伸ばす。 だがキュルケは高く本を掲げる。 背の高いキュルケがそうするだけで、タバサは本に手が届かなくなる。 「わかってるわ。あなたにとって虚無の曜日がどんな曜日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ」 その理由は、実際に一度超音波メスを受けているからなのだが。 「でも、今はね、そんなこと言ってられないの。恋なのよ、恋」 タバサは首を振った。 どうしてそれで自分が行かねばならぬのか、理由がわからない。 「そうね。あなたは説明しないと動かないのよね。 ああもう!あたしね、恋したの!でね?その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!あたしはそれを追って、二人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの!わかった?」 タバサは首を横に振る。 まだ理由がよくわからない。 理由がわからない以上受けるわけにはいかない。 それは失礼というものである。 「出かけたのよ!馬に乗って!あなたの使い魔軍団なら追いつけるのよ!助けて!」 そう叫んでキュルケはタバサに泣きつき、ついでに幼体達も騒ぎだした。 ようやくタバサは頷く。 ギャオス達じゃないと追いつけないなら仕方がない。 「ありがとう!じゃ、追いかけてくれるのね!」 タバサは再び頷く。 キュルケは大切な友人である。 友人が自分にしか解決できない頼みを持ち込むならばしかたがない。 面倒だが受けよう。 タバサは窓を開け、口笛を吹く。 それ聞き、すぐに学院のあらゆる場所からギャオス達が飛んでくる。 「……いつ見ても、あなたの使い魔軍団は凄いわね」 ギャオス達に囲まれ姿が見えなくなったタバサを眺めつつキュルケが呟く。 ふと、疑問に思ったことがある。 「そういえば、こいつらに名前あるの?」 その疑問にタバサはすぐに答える。 「この子はシルフィード」 タバサが目の前のギャオスに視線を向ける。 「この子はアベル」 そのまま隣のギャオスに視線を向ける。 「あの子はコーウェン」 さらに他のギャオスに視線を向ける。 「その子はポルタン、そっちの子はツクヨミ、その下の子はピアデゲム、あの三匹はアマテラスとパルパレーパとスティンガー、その隣の子はジェイデッカー、向こうの子はメガトロン、そこの群れは右からヒルメ、ピサソール、マイトガイン、ゴルドラン、ゾヌーダ、タケハヤ」 「よ、よく見分けがつくわね……」 そんな二人を乗せ、シルフィードと呼ばれたギャオスは飛び上がった。 「馬二頭と人間二人、絶対に食べちゃだめ」 タバサは「絶対に」を強調しつつ目的を伝える。 ギャオス達はタバサに了解の意を伝えると、その翼を羽ばたかせ、巨大な群れ全員で目的の二人、ルイズと才人を探し始めた。 その後、トリステイン城下は大パニックに陥るのだが、町にいる間『イーヴァルディの勇者王』を読んでいたタバサには関係のない話である。 前ページ次ページテスト空間/ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9134.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第四十二話「シャルロットひとり旅」 古代怪獣ダンガー 古代怪獣キングザウルス三世 怪奇植物スフラン 見習い怪獣ファルマガン 登場 「ねえタバサ、聞いた? トリスタニアでまた、ウルトラマンゼロが怪獣を退治したんだって。 相変わらず、大活躍よね」 夏季休暇中のトリステイン魔法学院、その女子寮のタバサの部屋。休暇中も学院に留まっている タバサにつき合っているキュルケが、都から届いた噂話を持ち掛けた。 「今度の怪獣は、何か緑色のぶよぶよした奴だったんだって。それなら、ゼロの勝ちはむしろ当然ってところよね。 彼、あんなに強いんだもの。あたしたち、それをよく見たじゃない」 しゃべっているのはキュルケばかりで、タバサは本に目を落としたまま、ひと言も返事しない。 しかし、キュルケはお構いなしだ。タバサが無口なのは、今に始まったことではない。 「トリスタニアの人々は、ゼロたちをすっかり崇拝してるみたいね。始祖ブリミルが遣えし守り神だって。 でも、本当のところはどうなのかしら? ゼロたちに、その敵の怪獣、ウチュウ人はどこから来たものなのかしらね。 何だかんだで、あたしたち、彼らのことを何も知らないわ」 ふと、ゼロたちの出自を気に掛けるキュルケ。ルイズ以外のハルケギニア人は、ゼロたちが 別の宇宙からの来訪者であることなど、少しも知りはしないのだ。 ここでキュルケは、あることを思い出して、タバサに問いかけた。 「そういえばタバサ、あなた、ウルトラマンゼロが初めてあたしたちの前に現れた時、あんまり 驚いてなかったわよね。いえ、驚いてはいたようだけど、あたしたちのとは何と言うか、 質が違ったような。それはどうして?」 ハルケギニアでのゼロの最初の戦い、即ちゴメス、ベムラー、アーストロンが学院を襲った時のこと。 あの時は自分も色々と頭がこんがらがっていたから気づかなかったが、思い返すと、キュルケと シルフィードの上に跨っていたタバサは、ゼロを見て奇妙な反応を示したようだった。いつも無表情な タバサだが、親友のキュルケには分かる。 あれは、常識からかけ離れた存在を初めて見た驚きの顔ではない。それに、どういう訳か、 懐かしみを感じているようでもあった。 そのことを指摘したら、タバサのページをめくる指が、ピクリと固まった。そして告白する。 「……わたしは、以前にウルトラマンを、見たことがある」 「嘘ッ!?」 衝撃的な内容に、さしものキュルケも口をあんぐり開いた。それはつまり、あの事件以前に、 ウルトラマンが既にハルケギニアにやってきていたということか? 「ゼロが現れたのって、あれが最初じゃなかったの?」 「違う。ゼロとは違うウルトラマン。姿が大きく異なるから。けれど、おおまかな特徴――特に、 胸部の発光体が酷似している。だから、あれはウルトラマンのはず」 「ゼロ以外にも、ウルトラマンっているの……? いえ、それは一旦置いといて」 疑問の一つを脇にそらしたキュルケは、タバサにずばり聞く。 「それは、一体どこでのこと? ウルトラマンが前にも出現したなんて話、あたしの耳に 入らないはずがないわ。タバサ、詳しく教えてもらってもいい?」 「……」 一瞬、話してもいいものかと考え込むタバサ。その話は重大な秘密である、彼女のルーツの中の 出来事なのだ。だから、満足の行く説明をするなら、その秘密を語らなければならない。 しかし、キュルケは既に自分の秘密と、正体を知っている。ならば、話してもいいだろう。 そう判断して、キュルケに語った。三年前まで時間をさかのぼる、彼女とウルトラマンの出会いの物語を……。 いきなり重大な事実を説明するが、タバサはただのメイジではない。ハルケギニア随一の 魔法大国であるガリア王国の王族、現在のガリア王ジョゼフの姪なのだ。本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。 ジョゼフの弟であったオルレアン公シャルルを父に持ち、かつては彼と母との三人、大勢の家臣たちとともに幸せな日々を送っていた。 しかしその幸せは、三年前の先王の崩御とともに終わりを迎えた。後継者は、先王の遺言により ジョゼフが選ばれたのだが、戴冠式に先立っての狩猟会で、シャルルは暗殺。そして優しかった母も、 ジョゼフの仕掛けた罠からシャルロットを守るために魔法の毒薬をあおって、狂人となってしまった。 更にシャルルに反逆者の濡れ衣が着せられ、オルレアン公家は断絶。シャルロットは瞬く間に、 家族と帰る場所を奪われてしまった。 更に受難は続く。従姉であり、ジョゼフの戴冠でガリア王女となったイザベラに、当時十二歳という、 若い以前に子供のシャルロットに『ファンガスの森』に巣食う怪物の退治が命ぜられたのだ。 メイジではあっても、戦いの経験などあるはずがないシャルロットにそんなことが出来るはずがない。 退治の名を借りた処刑だ。しかし、シャルロットに拒否は出来なかった。拒めば、身を挺して自分を救った母が、 本当に殺されてしまうからだ。 こうして、「タバサ」になる前の無垢な少女は、強制的に処刑場の森へ赴くこととなったのだった。 「ひッ、いッ……!」 そうしてシャルロットは、『ファンガスの森』で、首が二つもある巨大オオカミの怪物に 追い詰められていた。父の形見の杖を握り締めて、怪物に攻撃しようと考えるも、怪物の上げる 圧倒的な咆哮に気力を根こそぎ奪われ、恐怖にすくんでしまう。今のシャルロットに、 恐怖に立ち向かう勇気は存在しない。そして恐怖に支配された心では、呪文を唱えることも出来なかった。 「グルルルル……!」 怪物はナイフほどの大きさの牙を剥き出しにして、自分に食らいつこうとしている。後一分もしない内に、 自分は肉を切り裂かれて命を落とすことになるだろう。シャルロットは死を悟った。 「キャンキャンキャンッ!」 しかし意外にも、そうはならなかった。怪物は突然目線を上にやったかと思ったら、子犬のような 悲鳴を上げてあっという間に森の闇の中に飛び込んでいったからだ。 「え……? 助かった……?」 一瞬そう考えたが、すぐに間違いだと知ることとなる。背後から途轍もない威圧感を覚えて、 振り返ると、信じられないものがそこにそびえ立っていた。 「キャアキィ!」 「!? きゃあああああああああッ!?」 自身の後方には、頭の位置が50メイルにも達しようという、一本牙と左右の手に一本きりの鉤爪、 首の周囲にはタテガミのように連なった複数のコブを生やした大怪物が存在していたのだ。 これと比べれば、先ほどのオオカミの怪物など、まさに子犬に等しい。あの大怪物を視界に入れて、 脅えて逃げていったに違いない。 「キイイィ!」 そして気がつけば、反対方向からは、四つ足で魚のエラのような背ビレと、頭部には長く曲がった 見事な二本角を生やした竜が出現していた。こちらも、先の大怪物と同等の巨体だ。シャルロットの知る生物とは、 身体のサイズがかけ離れすぎている。こんな生物が地上に存在したとは。 シャルロットの知る由のないことだが、これらの大怪物――怪獣は、どちらもウルトラマンジャックが 交戦した種である。前者はダンガー、後者はキングザウルス三世。異名は両方とも古代怪獣だ。 「キャアキィ! キャアキィ!」 「キイイィ! キイイィ!」 ダンガーとキングザウルス三世はお互いの存在を認めると、即座に血の気に駆られて、 戦いを始めようと森の木々を押し潰しつつ接近し合う。その間には、シャルロットの姿。 「あ、あああ……!」 このままでは、怪獣たちの足の裏の下敷きになってしまう。そうなったら死は免れない。 それは分かっていたが、シャルロットはすっかり腰を抜かしてしまい、一歩も動けそうになかった。 一度は助かったように思ったが、やはり自分はここで死ぬ運命だったのか。既に生存の道を諦め、 シャルロットは固く目をつむった。どうせ、このまま生きていても仕方がないのだ。こんな大怪物たちの いる森で、怪物退治など出来ようものか。ならばいっそ、このまま死んだ方が――。 「危ない!」 すっかり諦め切ったシャルロットの身体を、突然何者かが抱え上げ、怪獣たちの進路から離れた。 「キャアキィ!」 その一瞬後に、シャルロットのいた場所にダンガーの足が振り下ろされ、地面を陥没させた。 「え……!? な、何……!?」 急な展開に動揺を隠せないシャルロット。自分を助けた者の顔を確かめようとするが、 何故か木肌や葉っぱばかりが見えるだけで、そこにあるはずの顔がよく見えない。 もっとはっきり確かめようとするのだが、すぐにそんな余裕はなくなった。周囲の木々から 肉厚の葉が伸びてきて、助けた者ごとシャルロットを締めつけたのだ。スフランという吸血植物である。 「きゃあッ!!」 「危ない! 危険! 助けて!」 助けた者も捕まり、必死にわめいて助けを求めた。するとそれに応じたかのように、どこからか 矢が飛んできて、スフランに突き刺さった。その矢には、先端に火薬束が括りつけられており、 すぐに爆発してスフランを引き裂いた。 「ひッ……!」 間近で火薬が炸裂したショックで、先ほどから精神をすり減らしていたシャルロットは意識の糸が切れ、 カクンと首が垂れて失神した。 シャルロットが気絶してから、彼女を助けた者に、矢を放った者が走り寄る。 「全く、気をつけなよ。この辺は人食い植物が生えてるって注意したじゃないか。――その子は?」 「あ、う……」 「いや、説明は後でしてもらうよ。今はここから離れよう。怪物たちの喧嘩に巻き込まれて 圧死なんてごめんだよ」 爆弾矢の射手は、シャルロットを抱える者を連れて、足早に怪獣たちから離れていった。 「キャアキィ! キャアキィ!」 「キイイィ!」 怪獣たちの方は、互いに距離を詰めて、とうとう戦闘を開始した。ダンガーとキングザウルス三世の 二大怪獣が正面衝突する――。 「キャアキィ!?」 と、思いきや、ダンガーの方が一方的に弾かれた。見ると、キングザウルス三世は首を ユラユラうごめかしつつ二本の角からバリヤーを張っていた。それがダンガーを押し返したのだ。 「キイイィ! キイイィ!」 「キャアキィ!」 ダンガーはどうにかバリヤーを突破しようとするが、触れるだけでダメージを食らい、 破ることは叶わなかった。ダンガーは肉弾戦のみが武器の怪獣。丸で勝ち目がなかった。 「キイイィ!」 ダンガーの動きが鈍ったところで、キングザウルス三世は突進。その膝に鋭い角を突き刺した。 「キャアキィ!!」 「キイイィ!」 甲高い悲鳴を上げて苦しむダンガーに、とどめの熱線を口から放射する。その一撃でダンガーは バッタリ倒れ、粉々に吹っ飛んだ。 古代怪獣対決は、キングザウルス三世の完勝で幕を閉じた。 「キイイィ! キイイィ!」 キングザウルス三世は雄叫びを上げると、ダンガーを倒したことで満足したのか、悠然と 木々を踏み潰しながら『ファンガスの森』の奥地へと立ち去っていった。 「……う、ん……?」 シャルロットが目を開けると、土壁が一番に目に入った。ゆっくり辺りを見回すと、どうやら 洞窟の中らしいことが分かった。藁を敷き詰めた寝床に、鍋や釜の調理器具。そして立てかけられた弓と、 人間が生活している様子である。 「わたし、どうなって……」 「だ、大丈夫?」 シャルロットが失神前の記憶をたぐり寄せていると、彼女の視界いっぱいに、怪物の顔が映り込んだ。 全体的な輪郭は人間だが、それは木の幹や葉っぱ、空き瓶や折れた杖などのゴミで出来上がっているのだ。 「いやああああああああああッ!?」 突然目に飛び込んだ怪物の顔に、シャルロットは思い切り悲鳴を上げて、自身の杖で怪物の頭を ポカポカ殴り出した。 「いやッ! 来ないで! わたし、美味しくないんだから!」 「い、痛い! 痛い! やめて!」 タコ殴りにされる怪物は反撃も抵抗もせず、こちらも悲鳴を上げた。すると、シャルロットに 制止の声が掛けられる。振り返ると、野性的な魅力のある若い女が苦笑を浮かべていた。 「やめてあげな。そいつは確かに人間じゃないけど、悪い奴じゃないよ。むしろあんたを助けたんだ。 見たところ貴族のようだけど、それならお礼のひと言でも言うべきなんじゃない?」 「えッ?」 はたと手を止めたシャルロットは、気絶する寸前のことをよく思い出した。確かに、自分は誰かに 助けられたのだ。あの時は顔がよく見えないと思ったが……あの時見えた木肌が、この怪物の顔だったのだろう。 「ご、ごめんなさい。わたし、気が動転してて……」 「大丈夫……」 落ち着いたシャルロットは頭を下げて謝罪した。怪物は頭をさすったが、怒ってはいないようだった。 「あたしはジル。この『ファンガスの森』で狩りをしてる者さ」 シャルロットが落ち着いたところで、女が名乗った。それから、怪物にも促す。 「ほら、あんたも、自己紹介」 「ファ……ファルマガン……」 木とゴミで出来た怪物は、そう名乗った。言葉を上手くしゃべれないのか、かなりたどたどしい口調だ。 「わたしはシャルロットです……」 シャルロットも名乗ると、早速ジルが質問をしてきた。 「シャルロット。あんたどうして、この森をほっつき歩いていたんだい? あんただって、 この『ファンガスの森』が、どうなっているんだか知っているんだろう?」 シャルロットは回答に困る。自分の身の上を話しても、信じてもらえるとも思えない。 「武者修行……」 ぽつりと嘘を吐くと、ジルはシャルロットを驚老いたように見つめ、それから大笑いした。 「あーっはっはっは! 武者修行だって? おっかしー! あんた、何考えてんのさ! この『ファンガスの森』はいまやバケモノの巣なんだよ? 立ち入り禁止の札だって立っているだろうに! あんたみたいな子供が武者修行するにゃ、ちょっと荷が勝ちすぎるんじゃないの?」 ジルの言う通り。『ファンガスの森』にはかつて、魔法生物や「合成獣(キメラ)」を研究する塔があった。 しかし三年ほど前に、作っていた怪物たちが脱走し塔は壊滅。以来森は人を全く寄せつけない、怪物の世界に なってしまったのだ。 「悪いことは言わないよ。帰りな。この森には、キメラだけじゃない。さっき見たような、 超巨大な怪物も闊歩してるんだ」 「あの巨大怪物は、何でしょうか……? キメラとは、また違うみたいでしたけれど」 「さぁてね、分かんない。塔の跡地で研究ノートを拾ったんだけど、正直眉唾な内容だったよ……。 まぁでも、巨大怪物はまだいいさ。足元の人間には目もくれないし、互いに殺し合って勝手に数を減らす。 昔は何匹もいたんだけど、今となっちゃたった三匹……いや、さっき一匹死んだから、とうとう 二匹だけになったね。それより危険なのが、“キメラドラゴン”って奴だよ」 キメラドラゴン、その名前をシャルロットは知っている。『ファンガスの森』のキメラの中で 最強最悪な個体で、シャルロットはそれの討伐を言いつけられたのだ。 「ただでさえ強力な火竜に、なんだか知らんが別の生き物を組み合わせて、さらに強力に したっていうんだから……。そんな奴に出くわしたら、どうしようもない」 ジルの言葉で、シャルロットは絶望に包まれる。キメラドラゴンなんか、自分に倒せる訳がない。 この任務は遠回しの処刑だ。どうせ死ぬのなら、先ほど死ぬべきだったのではないか。 そう思い、シャルロットはジルに頼む。 「あの……、お願いです。わたしを、殺してください」 ジルは静かに、それまで黙っていたファルマガンは驚いて、シャルロットを見つめた。 「何を考えてるんだい? あんた」 「何も……、というか、もう、何も考えたくない。全部、つらいことばっかり。生きていたくない」 と言うと、ファルマガンが急に、声を荒げて割り込んだ。 「死ぬ、ダメ」 「え……?」 「死ぬ、いけない。つらいことばっかり、違う。生きる、楽しい、ある。きっと、ある」 たどたどしい口調だが、熱心に説得するファルマガン。しかしシャルロットは、心を動かさない。 「ほっといてよ。わたしのこと、何も知らないくせに。わたしの人生には、もう楽しいことなんて、 ないもの……。ジルさん、お願いです」 改めてジルに頼むが、ジルは首を横に振った。 「やなこった。人殺しなんかごめんだし、何よりファルマガンが反対してる。こいつはあたしの同居人なんだ。 ファルマガンが嫌と言うなら、あたしも引き受けないよ」 「そんな……!」 「どうしても死にたいって言うのなら、あんたの事情を話してごらんよ。今度はさっきみたいに、 はぐらかさないで。腹を割って話しなよ」 というジルの要求。てこでも動きそうにない彼女らの様子に、シャルロットは観念して、 自分の素性を打ち明けた。父が殺されたこと、母が心を奪われたこと。母を助ける代わりにと、 キメラドラゴンの討伐を命じられたこと。 「……という訳です。でも、ドラゴンに敵うわけなんかない。でも、あの人たちの思い通りの死に方で 死ぬなんてまっぴら。だから、殺してほしいんです」 そう説明すると、ファルマガンがまたも口を挟んだ。 「敵うわけなんかない、違う」 「……え?」 「練習。シャルロット、戦う、練習。練習、超える。自分、超える。キメラドラゴン、超える」 訴えかけるファルマガンは、一拍間を置いて、告げた。 「お母さん、助ける」 シャルロットは、一瞬、呆然とした。それから、ジルも言う。 「ファルマガンの言う通りだよ。やる前から諦めるなんて、あんた、甘えてるよ。親を殺されて 悔しくないの? 母さんを助けたくないのかい? ここで頑張って、キメラドラゴンを 倒せるようになるのさ」 「そ、そんなこと、出来っこない! 戦いなんてしたことないもん!」 頑なに首を振るシャルロットに、ジルは言い聞かせる。 「いいや、出来るさ。あんたの事情は、あたしに似てる。平民のあたしが戦えるようになったんだから、 メイジのあんたなら簡単だよ」 「え? 似てるって……?」 「あたしも、家族を殺されたのさ。この森のキメラに、食い殺されて。あたしはそれが納得できない。 キメラどもを全滅させなきゃ、気が収まらないんだ。だからあたしはこの森で戦う練習をして、 キメラを狩ってる。最初はてんでダメだったけど、今じゃ結構やるようになったもんだよ」 と言って、シャルロットの目を覗き込んだ。 「あんたには、あたしの弓よりも強力な武器がある。その杖だよ。あんたなら、きっと、 いや、絶対出来る。……どう? 何もかも諦めるくらいなら、その可能性に賭けるのも、 悪い話じゃないんじゃない?」 まっすぐな、力強いジルの瞳を見つめて、シャルロットも遂に心が動いた。杖を握り締め、頷く。 「そうこなくっちゃ」 ジルがほっと安堵するが、それ以上にファルマガンが安心していた。 「シャルロット、練習、する。よかった。ファルマガンも、練習」 と言いながら、折れたジルの矢をたぐり寄せ、切り株のテーブルの上に乗せると、それに手をかざした。 「……ファルマガンは何をやってるの?」 「いいから見てな。ファルマガンも練習してるんだよ」 シャルロットが見ている先で、ファルマガンの手の平から、光が発せられた。その光が矢に当たると、 折れた矢はみるみる内にくっついていく。 「! すご……い?」 途中で疑問形になるシャルロット。何故なら、矢はまっすぐにくっつかなかったからだ。 くの字に修復されている。これでは使い物になるまい。 「……失敗」 ファルマガンは矢をまた折り、修復をやり直す。が、次も上手く行かず、四苦八苦している。 ファルマガンが試行錯誤している間に、ジルが彼のことをシャルロットに教えた。 「ファルマガンも、塔で生み出された怪物の一匹だよ。あたしも、最初に出くわした時は かなりビビッたものさ。けれど、あいつは他の化け物と違って、優しい性格をしてる。 だから同居してる訳。能力も、物や傷を再生するっていうものさ。見ての通り、下手くそだけどね。 さしずめ、見習いの怪物だよ、あいつは」 どうにも上手く行かずに頭をかくファルマガンの姿に苦笑するジル。 「でも、あれでも最初の頃よりかは上手くなったもんだよ。自然物だったら、問題なく直せるようになったしね。 出会った頃は、言葉だってあーとかうーとかしかしゃべれなかったんだよ」 「そうなんだ……」 「まだまだつたないけど、練習を重ねて、上手になった。あたしもそうさ。シャルロット、 あんたもそうなるよ」 ジルの言葉と、諦めないファルマガンの姿勢に、シャルロットの心に元気が湧いてきた。 自分も頑張れば、絶対無理と思っていたキメラドラゴン討伐が出来るかも! そう思えるようになっていた。 しかし見ている先で、ファルマガンは頭から煙を噴き上げ、とうとう後ろにバタンッ! と倒れてしまった。 「あぁッ!? ファルマガン!」 「あ~あ……いいところを見せようと、張り切りすぎだよ」 倒れたファルマガンを介抱する二人。と、シャルロットはファルマガンの身体の間から、 赤い何かが転がり出たのを目にした。 「これ、何?」 それは手の平で包み込めるサイズの、赤い球であった。放射状に歪なトゲが生えているので、 実際に包み込んだら痛そうだが。 それを掴もうとしたら、ファルマガンは無理をしてでも起き上がり、シャルロットより早く赤い球を取った。 「きゃッ!?」 「触る、ダメ!」 ファルマガンは素早く、球をまた身体の合間に押し込んで隠した。 「これ、危ない。触る、ダメ。シャルロット、壊れる」 「え? どういうこと?」 訳が分からず目を白黒させるシャルロットに、ジルが説明を入れる。 「そいつは、塔の跡からファルマガンが見つけたものさ。研究ノートに、それのことが書いてあるよ。 読んでみるかい?」 羊皮紙の束を引っ張り出して、シャルロットに手渡す。シャルロットはその内容にざっと目を通した。 大体、こんなことが書いてあった。 『森の中に転がっていた赤い球は、人の思い描くような生物を召喚する、不思議な力があることが判明した。 我々はその効果で、何匹もの常識を凌駕する生物を召喚することに成功した。これがあれば、キメラの研究が 格段に進む。明日は、もっと凄い生物を多数召喚する実験を行う』 その明日からの記録が存在しなかった。これを見る限り、その実験に失敗して、塔は壊滅したようだ。 「あたしは、そいつを書いた奴の妄想だと思うけどね。ファルマガンは真に受けて、球を誰にも 触らせないようにしてるのさ。まぁ、万一本当だったとして、自分から化け物を増やすこともないから、 あたしは触ろうと思わないけどね」 ノートの真偽はともかく、シャルロットもわざわざ赤い球をファルマガンから取り上げようとも考えなかった。 「ともかく、これからしばらくよろしくね、シャルロット。絶対に、キメラドラゴンをぶっ倒して、 あんたのお母さんを助けてやろうじゃないか」 「シャルロット、頑張る。ファルマガンも、頑張る」 「……うん!」 ジルとファルマガンの二人から温かく迎え入れられて、シャルロットは思わず微笑んで頷いた。 その笑顔は、先王の死去以来、久しく彼女から失われていたものだった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9343.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百七話「ガリア狂奏曲(ラプソディ)」 双脳地獣ブローズ 登場 仮装舞踏会の夜、突如魔法学院に現れてルイズを誘拐しかけた謎の女、ミョズニトニルン。 しかもタバサが自らの意思でミョズニトニルンの言いなりになり、才人に攻撃してきた。 勝負はタバサが途中で心変わりしたことと、実は生きていたコルベールの救援により勝つことが 出来たが、直後にタバサが学院から忽然と姿をくらましてしまった。タバサはどこへ行って しまったのか、彼女の身に何が起きているのか……案ずる才人たちオンディーヌの前に突然 現れたのは、というより空から降ってきたのは、「タバサの義妹」を自称する――その割には タバサよりずっと大きいが――イルククゥという少女が、タバサがガリア王政府に捕まったと 知らせてきた。イルククゥが語るには、ミョズニトニルンはガリア王からの刺客であり、 タバサは母親の命を盾に従わされていたのだ。そしてタバサが反旗を返したことで母親は 拘束され、取り返すために単身乗り込んだタバサは新たなガリア王からの刺客のエルフに敗れ、 捕らえられたのだという。イルククゥは才人たちにタバサの救出を依頼しに来たのだった。 あまりにいきなり現れたイルククゥの素性を疑う者も少なくなかったが、タバサの使い魔の シルフィードが肯定したことで本当だと証明された。――イルククゥは何故かシルフィードが いる間はずっと、姿が見えなかったが。 ともかく、タバサを救い出さねばならぬ。今にも飛び出していきそうな才人だったが、 今では彼もトリステインの貴族。れっきとした王国の政府に正面から喧嘩を売りに行くのは まずい、と指摘したルイズの提案により、まずはアンリエッタの元へ今回のことの報告と 相談に赴くこととなったのであった。 王宮に訪問するにはいささか常識知らずな時間帯ではあったが、タバサに万が一のことが あるかもしれない。時間の猶予がないオンディーヌは、コルベールに頼んで『オストラント』号を 出してもらい、迅速に王宮に到着してアンリエッタに取り次いでもらった。 そして才人、ルイズ、オンディーヌの隊員たちはアンリエッタに謁見し、事の次第を報告した。 それを受けたアンリエッタの発言は、 「わたくしとしましては、あなたたちが直接ガリアへ向かうことには賛同しかねます」 その回答に才人たちはショックを受けた。最悪でもガリアへの通行手形を発行してくれるくらいの 協力は得られるものと思っていたからだ。 「まずは向こうの大使を呼びつけて、詳しく事情を聞き、厳重に抗議いたしますわ」 「そんな。俺たちに、黙って見てろって言うんですか?」 才人が異論を挟むと、アンリエッタは困ったような顔になった。 「タバサ殿は初め、あなたとルイズを襲った連中の一味だったというではありませんか。 そのようなものを助けるために、どうしてあなた方が向かわねばならぬのです?」 「途中で裏切ってくれたから、ルイズを助けることができたんです。彼女は俺たちの、恩人なんです。 ルイズの恩人ということは、トリステインの恩人じゃありませんか」 「では、百歩譲って彼女を我らの恩人ということにいたしましょう。しかし聞けば、タバサ殿は ガリアのシュヴァリエとのこと。極端なことを言えば、彼女をどうしようが、それはガリアの勝手では ありませんか。わたくしたちが、それに口出しすることは、内政干渉と取られましょう」 「行くのは俺たちです。トリステイン政府の密使や軍じゃない」 「いいえ。あなたたちはトリステインの貴族、トリステインの騎士隊ですよ。向こうで犯罪人と されている人物を救出などしたら、最悪開戦の口実になります。あなたはそれでも行くと言われるの?」 開戦、と言われては、才人も閉口せざるを得なかった。まさかこの身が、トリステインの再びの 戦争のきっかけになる訳にはいかない。 それでも才人は考えを巡らせて、どうにか食い下がろうとする。 「でも……ガリアからの刺客は、明らかに怪獣を操ってました! あいつらは、怪獣を使って 良からぬことをしたんです! これを放っておいてもいいんでしょうか?」 攻め方を変えてみるが、アンリエッタの意見を翻す結果にはならなかった。 「残念ながら、状況証拠しかありません。向こうがミョズニトニルンなる女や怪獣のことを 知らぬと言い張れば、それ以上踏み込むことは叶いません」 才人は奥歯を噛み締めた。言われてみれば、ミョズニトニルンがガリア政府の手の者だという証拠も、 イルククゥとシルフィードの証言だけ。国際的な説得力のある証拠にはなり得ないだろう。 「女王陛下のおっしゃるとおりだよ」 「また戦争になるのはまずい」 レイナールをはじめとする生徒たちからもそんな声が上がった。才人は彼らにこう返す。 「分かった。お前たちは先に学院に戻れ」 「サイト。ぼくたちは別に怖がっているわけじゃ……」 「分かってるって。別にお前たちを臆病者とか思ってるわけじゃないよ。女王さまの言うことも もっともだし、お前たちの気持ちも分かる。ただ、もうちょっと話があるんだ」 才人の気持ちを汲んで、オンディーヌの面々はギーシュとマリコルヌを残し、執務室から辞していった。 それを確認してから……才人は、ゆっくりと肩に羽織ったマントを脱いだ。 「な、何をするんだきみは」 ギーシュが慌てた声を出したが、才人はアンリエッタにマントを返す手を止めなかった。 「お返しします。短い間だったけど……、お世話になりました」 「……本気ですか」 驚愕し切ったアンリエッタの問い返しに、才人は重々しく首肯した。 「姫さまが何とおっしゃっても、タバサは俺たちの恩人で……友達なんです。その命と比べたら、 どんな称号も惜しくはありません」 それは才人の本心であった。 実際、才人はタバサが一人でガリアへ行ってしまったことについて、悔しい気持ちだった。 自分たちに迷惑を掛けないようにという考えだったのかもしれないが、自分は彼女に助けて もらいっぱなしだ。そんな彼女を助けられないで終わりには出来ない。何より……どんな時 だろうと友達を、仲間を見捨てることは出来ない。 それが、才人がゼロとともに戦う日々の中で見出した信念だ。 アンリエッタは才人の本気を感じ取っていたが、それでも迷っている様子だった。それを見て、 ルイズも前に進み出た。 「姫さま、わたくしの気持ちもお確かめ下さい」 ひと言告げて……ルイズまでがマントを脱いだのだ! 「ルイズ!」 これには才人たちも仰天した。あの誰よりもプライドの高いルイズが……その象徴たる マントを脱ぐとは! 「ルイズ! あなたまで……何をしているのは分かっているの!? よりによってあなたが…… 貴族の位を捨てようだなんて!」 アンリエッタは開いた口がふさがらなかった。彼女にとっても、それほどに衝撃的なことであった。 ルイズは己の真意を語る。 「わたしは、今回、ガリアのシュヴァリエ・タバサ殿を救いに行こうと決心いたしました。 同時に、それに姫さまが反対なさるであろうことも知っておりました。それを知りながら 報告に参った理由こそが、今のわたしが見出した貴族としての魂の在り処でございます」 ルイズはまっすぐにアンリエッタの瞳を見つめた。 「わたしはずっと、姫さまに仕えることが貴族だと信じてまいりました。しかし、いくつもの 冒険を経て、心のどこかがそれは違うと唱えるようになったのでございます。姫さまに仕えることは もちろん大切なことではありますが、妄信することが真の貴族ではない。地位や名誉すらも必要な ものではない。――己の信じる“筋”を通すことこそが、真の貴族である。それが、わたしの出した答えです」 才人は、ギーシュやマリコルヌでさえ声が出ないほどルイズに感服していた。 トリステインの貴族として、今のルイズの発言はいただけないものかもしれない。だが…… 今のルイズの立ち姿は、彼らにはとても輝いて見えるのだ。学院のどこを探しても、こんなに 輝かしい人間はいないと言えるほどに。 その輝きは、ルイズの内面から生じているものであった。初めは貴族の固定観念にすがりつく だけのちっぽけな娘であったが、今では見違えるほどの大人物となったからだ。戦いの中で ゼロたちから大事なものを学び、成長していたのは、才人だけではないのであった。 ルイズは最後にアンリエッタに頼み込む。 「陛下におかれては、ガリアに向かったわたしたちを、反逆者としてお扱いくださいますよう、 お願い申し上げます。さすれば、まかり間違ってもお国の大事とはなりませぬ」 どんどんと話が大きくなっていって、ギーシュとマリコルヌはどうしようと顔を見合わせたが、 ここで自分たちは関係ないですなんて言ったら末代までの恥になる気がする。二人はルイズたちと 同じ立場になることを静かに表明した。 アンリエッタはしばし呆然と立ち尽くしていたが……やがて、ふぅとため息を漏らすと、 ルイズたちへ顔を上げた。 「わたくしの負けです……」 「と、いうことは!」 「ええ。国として公に支援することは出来ませんが、あなた方のガリア行きを黙認します」 その言葉を聞き、ルイズたちは一気に顔を輝かせた。ギーシュとマリコルヌは女王陛下の 御前ということも忘れて、やったぁ! と諸手を挙げていた。 「ありがとうございます! 姫さま!!」 感激して礼を言う才人に、アンリエッタは苦笑した。 「国家反逆罪に問われて、お礼を言うのはおかしいですわ」 「それでもです! でも……本当にいいんでしょうか? 今更ですけど、すごい無茶なお願いなのに」 ちょっとばかり不安になる才人。するとアンリエッタは述べる。 「たくさん反対しましたが、あなた方の何としても友を救いたいお気持ち、わたくしも分からない 訳ではありませんから」 少し前までのアンリエッタならば、命を捨てに行くと言っても過言ではない無謀な旅に ルイズたちを送り出すことなど断固として許さなかっただろう。だが彼女もまた、人々の命や 仲間のために死をも恐れず全力を尽くすウルティメイトフォースゼロの姿に、王として、 人として大切なものを感じ取っていたのであった。 「さぁ、わたくしが向こうを向いている間に早くお行きなさい。反逆者はいつまでも王宮に いるものではないわ」 「かしこまりました」 「あ、最後にもう一つだけ……わたくしにこれだけのことをさせておいて、タバサ殿を助けられずに むざむざと帰ってくることだけは本当に許しませんからね?」 「はい!」 背を向けたアンリエッタに深々と頭を下げてから、一行は勇んで執務室を飛び出した。 他の隊員たちはもうオストラントに戻っているだろうか。自分たちも乗り込んだら、直ちに ガリアへ向けて出発だ。 そう意気込んでいたその時……王宮の外から、激しい地響きとけたたましい獣の雄叫びが轟いてきた! 「グギュウゥゥゥ!」 「な、何事かね!?」 四人が慌てて窓から外を覗くと……トリスタニアの街中に、一体の怪獣が出現していた! 「う、うわぁッ! 身体の上下に顔があるぞ! 何て気味の悪い!」 マリコルヌの叫んだ通り、怪獣はエビ反りした芋虫のような胴体の先端に、それぞれ顔を 持っていた。双脳地獣ブローズだ! そしてブローズはあろうことか、オストラント号の方に接近していた! 「ああッ! オストラントが危ない!」 「何、大丈夫だろう。オストラントの機動力があれば」 悲鳴を上げたマリコルヌに、ギーシュが言った。実際、ブローズの弁髪のような触手の攻撃を オストラントは素早く旋回することで回避した。 地を這って進むブローズの移動速度では、到底オストラント号に追いつけるものではない。 ギーシュらはそう考えて楽観視していたが、事態はそう簡単にはいかなかった。 「グギュウゥゥゥ!」 ブローズの触手がオストラントへ向けて伸ばされると、たちまちオストラントが怪しい色の 光球に覆われ、空中に縫いつけられたかのように動かなくなってしまったのだ! 「な、何だあれは!?」 それはブローズの特殊能力、金縛りの念動力であった。如何にオストラントの飛行性能が高くとも、 動きを止められてしまっては無意味だ! しかもブローズの振り下ろした触手により、主翼の片方が半ばからへし折られてしまった! 「あぁぁぁーッ! まずい、非常にまずいよッ!」 「みんなが危ないッ!」 「あッ、サイト!」 さすがのギーシュも絶叫し、才人はオストラントに乗り込んでいるコルベールたちを救出 するために駆け出していた。王宮の廊下の角を曲がってギーシュとマリコルヌの目から隠れて、 変身を行う。 すかさず飛び出していったウルトラマンゼロが、今にもオストラントをバラバラにして しまいそうだったブローズに背後から組みついて阻止した。 「グギュウゥゥゥ!」 『これ以上やらせるかよッ!』 そして腕の筋肉をもりもり際立たせ、腰をひねってブローズを背後へ投げ飛ばす! 『せぇぇぇぇーいッ!』 宙に放り出されたブローズはトリスタニアの外まで投げ出され、平原の上に落下した。 オストラントの金縛りが解けるが、片側の主翼を失ったことで水平姿勢を保っていられず、 墜落しかかる。しかしゼロが下から支えることで事なきを得て、そのまま街の外に安全に下ろされた。 「グギュウゥゥゥ!」 そのゼロにブローズが突撃してくる。振り返ったゼロは自ら迎え撃ちに走った。 『来やがれッ!』 ゼロはブローズの首筋を抑えて突進を止め、連続でチョップを繰り出してダメージを与える。 下の首が足に噛みついてこようとしたが、逆に踏みつけることで返り討ちにした。 「グギュウゥゥゥ!」 ブローズをあっという間に追いつめるゼロだが、相手からの反撃が来た。ブローズの体表から 毒ガスが噴出され、密着しているゼロを苦しめる! 『うぐッ!』 即座に距離を取ったゼロ。だがこれしきのことで参ったりなどはしない。すぐさまゼロスラッガーを 頭部から飛ばして、遠隔攻撃を仕掛けた! 「セェヤッ!」 「グギュウゥゥゥ!」 ふた振りのスラッガーはブローズの両側を斬りつけ、動きを完全に止めた。 『フィニッシュ!』 ゼロは間髪入れずにとどめのワイドゼロショットを撃ち込んだ。それが見事に決まり、 ブローズは木端微塵に吹っ飛んだ! 華麗に勝負を決めたゼロだが、すぐには飛び立たずに才人と言葉を交わす。 『ゼロ、今の怪獣は……』 『ああ、偶然現れたんじゃないだろう。恐らくは、ミョズニトニルンが連れてたのと同じ…… ガリアから差し向けられた奴だ』 ブローズは明らかにオストラント号を狙っていた。そんな偶然があるはずがない。 しかし本気で自分たちを仕留めようとしていたのでもないだろう。これしきの怪獣が、 ゼロに敵うはずがないことは向こうも分かっていたはずだ。 『警告か、それとも挑発のつもりか……。上等だぜ!』 どうやらガリア王は、自分たちの行動を察知したかどうかは知らないが、どうしても自分たちと 勝負がしたいらしい。ゼロと才人は、まだ見ぬガリア王のやり口に怒りを覚えるとともに、絶対に タバサを救わねばならないとの使命感を強めた。 しかし同時にゼロは警告した。 『だが、気をつけろ才人。相手はどうやら、ただ者じゃねぇみたいだぜ』 『どうしてそう言えるんだ?』 『この前の奴らと、今のを入れた三体……グレート先輩が言ってた、ある生命体の細胞から 生まれた怪獣たちの特徴と一致してる。となると、まだそうと決まった訳じゃないが、 その生命体ってのも……』 その生命体というものは、並みの宇宙人ではとても御し切れないほどの存在のはずだ。 もしもガリア王がそれすら支配下に置いているとしたら……ガリア王の隠している力は、 自分たちの想像をはるかに超えるということになる。 何はともあれ、ゼロはこの場を引き上げていった。 「いやはや、一時はもう駄目かと思ったが、全員無事でよかった。ゼロには本当に感謝しなければ いけないね」 ブローズの襲撃後、才人たち四人はオストラント号の周りでコルベールや仲間たちと、 この後のことについて相談をしていた。 「先生、オストラント号は修理できるんでしょうか? 派手に翼折られちゃいましたけど……」 才人が心配して尋ねると、コルベールは顔を曇らせた。 「直せないことはないが、どんなに急いでも七日は掛かるだろう」 「七日も待ってたら、タバサがどうなるか分かりませんよ!」 「全くだ。だから空路でガリアまで向かうことは出来なくなったな。どの道、オストラント号は 目立ちすぎるから今回の作戦には向かなかったが」 それではどうするか。代案を出すコルベール。 「となると、陸路で行くしかない。足となる馬を調達し、まずはミス・ツェルプストーが 知っているという、ラグドリアン湖畔の旧オルレアン公の屋敷へ向かう。そこがミス・タバサの 実家だそうだ。何か手がかりになるものがあるかもしれない。そしてたとえばここにいる全員が 敵地の中をゾロゾロと移動するのはまずいな。いざという時動きにくい。そういうことで、国境を 越えるのは多くても五、六人まで絞ろう」 コルベールの提案により、タバサ救出メンバーが選出された。まずはいの一番に名乗り出た 才人とルイズに、キュルケ、ギーシュとマリコルヌ、治療士として名乗り出たモンモランシーと いう結果となった。 「ミスタ・コルベールはどうするんですか?」 ルイズが尋ねると、コルベールは心苦しそうに答えた。 「わたしもついていきたいところだが、オストラント号を捨て置くことは出来ない。設計に関して わたしにしか分からないところも多いから、修理にはわたしの手も必要だからね」 コルベールが同行しないのはいささか残念ではあるが、元々無理を言って協力してもらっているのだ。 素直に了承するルイズたち。 だが才人は別のことを案じていた。 「先生、本当にここに留まっていいんでしょうか? トリスタニアの傍にいたら……きっと、 アニエスと出会いますよ」 アニエスにとって、コルベールは故郷の仇なのであった。その恨みは現在に至っても消えていない。 コルベールが生きていると知ったら、彼女の憎悪が再燃するかもしれない。 ハッとなったキュルケはコルベールにすがりついた。 「ジャン! いけないわ! あなたが残るなら、あたしも残る!」 そんな彼女を諭すコルベール。 「それはいかん。ミス・タバサのお屋敷はきみしか知らないのだからね。それに……たとえ結果が どうなろうとも、わたしは真正面から彼女と向かわねばいけないのだ。ずっと逃げ続けていても、 何の解決にもならないからね……」 「でも、ジャン……」 「いいんだ。わたしに任せてくれ」 コルベールの毅然とした眼差しに、さすがのキュルケも後ずさった。 「ミス・ツェルプストー、一つ約束してほしい。たとえわたしが命を落とすことになろうとも…… 報復など考えないでくれ。もう復讐の応酬は、わたしはこりごりだ。そんなことになったら、 わたしはこれ以上ないほど悲しむからね」 キュルケは無言でうなずいたが、引き下がった彼女が小さくつぶやいたことを、才人とルイズは 耳にしていた。 「……でも、本当はそんな約束できないわ。あたしのジャンに何かあったら、あたしの炎は 抑えられそうもないもの」 キュルケの複雑な思いはともかく、コルベールは最後に一つ問題を挙げた。 「さすがにガリアの領土を、そのままの姿で動き回るのはいけない。何かに身を扮する必要が あるが、それはどうするか……」 「そういうことは、私に任せてもらないかしら。得意なのよ」 突然、話に加わる者が現れた。才人たちが振り返ると、一人の女性がこちらに近づいてくるところだった。 「何せ、本職の劇団だったからね」 「あなたは……ウェザリーさん!!」 才人が大きな声を発した。彼女の顔と、頭に生えた獣の耳は忘れるはずもない。かつて才人の クラスメイト、春奈がこの世界に連れてこられた件で、侵略者に利用されていた人間と獣人のハーフ、 ウェザリーだった。 「もう刑期を終えられたんですか?」 「そうじゃないんだけれど、司法取引があってね。極秘の隠密作戦に協力するのなら、残りの刑期を 帳消しにしてくれると言われたの。私の能力はその作戦に打ってつけだからって。まぁ向こうには、 いざという時に容易に切り捨てられるという思惑もあるのでしょうけど……それで牢屋の外に出る ことにしたの」 尋ねたルイズにウェザリーは苦笑を返した。 「あなたたちには大きな迷惑を掛けたけれど、短い間でも劇団の仲間だったわ。それを助けるのも やぶさかでもないからね」 恐らくは、アンリエッタが自分たちのために特別に手配してくれたのだろう。才人らは アンリエッタへの感謝の念で胸がいっぱいとなった。 「助かります、ウェザリーさん! あなたがいてくれたら百人力だ」 と言う才人。確かにウェザリーの特殊な魔法は、隠密作戦にはもってこいである。 しかし今度はコルベールが心配する番だった。 「信用できるのかね? 彼女は仮にでも、あのレコン・キスタの仲間だったではないか」 そんな彼に、才人は力強い目つきで答えた。 「俺は彼女を信じます。きっと、人と人の信頼って、そこに進み出ることから始まると思うんですよ」 才人の言葉を聞いたコルベールは一瞬目を見開いて、微笑を浮かべた。 「……そうだね。わたしも、アニエスくんのことを信じることにしよう」 「いいかしら? それじゃあ早速、ガリアに向かう人たちは『魅惑の妖精』亭に行きましょう。 そこに衣装と馬車を用意してもらってるわ」 ウェザリーの呼びかけで、才人たち六人はオストラント号の修理を行うコルベールとオンディーヌの 仲間たちと別れ、妖精亭へと向かっていった。スカロンたちも協力してくれているようだ。 才人は、自分がこれまで関係を築いたたくさんの人たちに支えられているのだということを実感し、 心の底から勇気が湧き上がってくるのを悟った。そしてその勇気は、タバサを必ず救い出すことへの 誓いを更に強めるのであった。 ガリア王国の首都、リュティスのヴェルサルテイル宮殿のグラン・トロワの一室に、敗れて 捕らわれたタバサは運び込まれていた。今の彼女は、エルフの魔法により深い眠りに就かされている。 「口元が母親に似ているな……、シャルロット。あのようになってさえ、お前の母は美しい。 美しい母に感謝しろ。お前が飲むはずだった水魔法の薬を代わりにあおいだ母を……」 そのタバサを玉座に横たえ、あどけない寝顔を見下ろす人物は、現ガリア王のジョゼフ一世。 ――彼こそがミョズニトニルンの主の、ルイズ、ティファニアに並ぶ“虚無”の担い手。そして タバサの仇である。 「ああ! 悲しいことだ! もしあの日のシャルルのあの笑顔がなければ、お前は今頃、 こんな険しい寝顔でなく、眩い笑みを浮かべていただろうに! エルフの魔法などで 苦しむこともなかったろうに!」 ジョゼフの両の瞳には、人としての輝きというものが全くといっていいほどなかった。 どこまでも暗く、淀んでいる。それは彼の狂気をまざまざと表していた。 彼には昔、一人の弟がいた。タバサの父親である、オルレアン公シャルル。彼は“虚無”の担い手故、 傍目からは魔法の才能がないように見えたジョゼフとは反対に、魔法の才に溢れていた。それだけでなく 明るい人柄で優しく、美徳も持ち合わせていた。しかしそれこそが、ジョゼフの心を苛んだ原因だった。 彼は天に恵まれた弟をひどく妬んでいた。だが憎んではいなかった。 その嫉妬が憎悪に転じたのは、先王が臨終の間際、次王にジョゼフを指名した時であった。 その時ジョゼフは、初めてシャルルに勝ったと優越感を抱いた。次王の座が確定していると 思われていたシャルルの端整な顔を歪ませられると思った。 しかしシャルルはジョゼフの想いとは裏腹に、にっこりと笑って祝福したのだった。その時こそ ジョゼフは絶望の底に突き落とされ……初めて弟を憎いと感じた。 だから暗殺したのだ。三年前の、あの日に。 だが、それからのジョゼフの日々は暗黒であった。シャルルという大きな存在を消して しまったことで、心にはぽっかりと穴が開いてしまった。その穴は何をしても埋まることがない。 ジョゼフは今も心の欠落を補おうとあがき……シャルルとのチェスよりも面白い対局を、 あの時の後悔を超える痛みを求めて、世界をもてあそんでいるのだ。 誰が彼のその心情に共感できようか? 『無能王』と呼称されるジョゼフの真の姿は、 恐ろしく頭脳に優れ、恐ろしく残酷で、そして恐ろしく狂ってしまっている『暗王』なのだ! 「シャルル、お前は言ったな。『兄さんは、まだ目覚めていないだけなんだ』と。目覚めたぞ! “虚無”だ! 伝説だ! お前の言った通りだ! ああ、お前はこうも言ってくれた! 『兄さんは、いつかもっとすごいことができるよ』と! やっている! おれは世界を チェスボードにして、ゲームを楽しんでいる! 全てがお前の言った通りだ! お前は本当に すごい奴だ! シャルル!」 壊れたように――実際壊れているのかもしれない――叫んだジョゼフは、部屋のある一点を 暗黒の瞳で見つめる。 「だがまだこんなものではない。おれはもっと大きな世界をこの手の平に乗せて遊んでやる。 おれの遊戯は、世界をも超える! あらゆる力と欲望を利用して、人の美徳と理想に唾を 吐きかけてやる! お前をこの手にかけた時より心が痛む日まで……おれは世界を壊し続ける!」 その視線の先に鎮座しているものは……痛々しいトゲがびっしりと生えた、歪んだ赤い球であった……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9372.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百二十話「ベアトリス南へ!」 健啖宇宙人ファントン星人 登場 「はぁ……」 トリステイン魔法学院の寮塔の一室で、一人の少女が窓の縁に寄りかかりながら物憂げに ため息を吐いた。と同時に、左右に垂らした金色のツインテール――当たり前だが怪獣の 方ではない――が揺らめいた。 彼女の名はベアトリス。今年の春から学院に留学してきた、アンリエッタの先々代の王から 大公領を賜ったことでトリステインから名目上独立したクルデンホルフ大公国の姫である。 しかし姫と言っても、アンリエッタやクリスらとは大きく違い、己の家の権力と財力、 それから国から連れてきた騎士団の武力を振りかざして学院で我が物顔に振る舞う、 ひと言で言えば生意気で嫌な性格をしていた。しかしクラスにティファニアがやってきてから 状況は一変。学院中の男が彼女の虜になり、己の影が薄くなったことを妬んで、ティファニアを いびり出した。そしてティファニアがハーフエルフの素性を明かすと、鬼の首を取ったかの ように強権を振るって、彼女を異端審問に掛けようとまでした。だがこれが己の首を絞める 結果になり、ルイズによってそんな権限はないことを暴かれたことで、それまでの高慢な行いも 祟って、逆に自分が物理的に吊るし上げられる一歩手前までに。 そこを救ったのが、誰であろう自分がいじめていたティファニアであった。その高潔さに 直面したベアトリスは、彼女と比較してのそれまでの自分を反省し、以降は大人しくなったのであった。 さて、現在の物憂げな様子のベアトリスに対して、今もつき従っている取り巻きの少女三人が 何事か尋ねかける。 「ベアトリス殿下、近頃そのようにため息をなさることが多いですね」 「何か悩みごとでしょうか?」 「よろしければ、わたくしどもがご相談を承りますわ」 ベアトリスは三人に振り向くと、次のように告げた。 「実はティファニアのことを考えてたんだけど……。あの子、あれだけやったわたしにことも あろうにお友達になりましょう、なんて言ったじゃない」 「ミス・ウエストウッドですか? ああ、そうでしたね」 「殿下、彼女とご友人になられるのはお嫌なのでしょうか?」 「違うわよ。むしろ、喜んでと言いたいところなんだけど……あんなことした手前、何もなしに 友達になろうなんてのは気が引けるわ……」 再度ふぅ、とため息を吐くベアトリス。彼女はティファニアに対する仕打ちへの罪悪感を 抱えていて、その感情がティファニアの申し出を素直に受けるのを躊躇わせているのだった。 そのため、ティファニアへの返事は今も保留のままであった。 すっかり覇気をなくしたベアトリスの様子を案じる取り巻き娘たち。 「ベアトリス殿下、そのようにお思いでしたのね……」 「罪悪感という感情がおありだったんですね……」 「あッ! 今ちょっと本音出したわね!」 ポロッと出たつぶやきに目を吊り上げるベアトリスだったが、それ以上は咎めなかった。 他人に対しての寛容さも、ティファニアとの出会いで手に入れたものだった。お陰で、思えば どこかよそよそしかった彼女たちと本当に親しくなれたと感じている。取り巻き娘たちが 軽口を言えるようになったのも、ベアトリスとの距離が近づいたからであった。 三人目の娘が進言する。 「それでしたら、ミス・ウエストウッドにまっすぐに謝罪されては如何でしょうか?」 「もちろんそれくらいのことは考えたわよ。でも、ただごめんなさいと言っただけで片づけよう なんて、ティファニアの厚意に甘えるようで嫌だわ。もっと自分で納得できる形でお詫びがしたいの」 「納得できる形でとおっしゃいますと……たとえば、ミス・ウエストウッドにお詫びの品を お送りするといった感じでしょうか」 「まぁそんなところかしらね。でも、家のお金で軽々と取り寄せたようなものでは駄目だわ」 真剣さを表情に出してそう言うベアトリス。 「ティファニアは自分の力だけで、新しい環境で勉学に励もうとしてる。そんな彼女の心意気に 対して恥ずかしいところのないような……ティファニアが一番喜びそうなものを、紛れもない 自分の力で用意しないと」 「難しいご注文ですね……」 少々困る取り巻き娘たちだったが、わがまま娘だったベアトリスがこんなにも真剣に他人の ことを考えているのだ。取り巻き娘たちはその変化が嬉しくて、ベアトリスのために自分たちも 真剣に彼女の注文を考えた。 短いツインテールの娘が尋ね返す。 「ミス・ウエストウッドの喜びそうなものとは、どんなものなのでしょうか」 「それが分かってるんだったら、ため息なんて吐いてないんだけど……。ただ、外の世界のことを 学ぶために学院に来たそうだから、まだこの学院の誰も見たことのないような珍しいものなんかが いいんじゃないかしら。それがどんなものかというのは、思い浮かばないんだけど」 ベアトリスが答えると、ポニーテールの娘が挙手した。 「まだこの学院の誰も見たことのない珍しいものの話、わたし一つ存じてますわ!」 「ほんと!? 言ってみなさいな!」 ポニーテール娘が話したのは、以下の通りだった。 「平民の使用人の間での噂を小耳にはさんだのですが、ガリアの平民の間では現在、『錬金』で 豆から作り出された代用食品が大流行してるそうなのです」 「代用食品? 世の中にはそんなものがあるの」 初めて知った、という顔のベアトリス。彼女は生粋のお姫さまであり、食べるものには 困らない生活をしているので、そんなものを目に掛ける機会などないから当然といえば当然だった。 しかし緑髪の娘がポニーテール娘に反論する。 「けれど平民向けの代用食品なんて、味はたかが知れたものでしょ」 「いいえ、それが他が作ってるものとは出来が段違いで、本物そっくりなんですって! 何でも、 美食家で知られる貴族も代用食で作られた料理を見抜けなかったほどなんだとか! 作成者の メイジはそれで既にひと財産築いてるそうよ」 「でもそれって、あくまで噂でしょう?」 緑髪娘は半信半疑だが、ベアトリスは俄然興味が湧いてきた。 「面白そうじゃない。続けて」 「あッ、はい。その代用食品ですが、製作者のメイジが現在トリステインを訪れて、この国でも 販売を行ってるそうです。まさに絶好の機会ではないでしょうか」 ポニーテール娘の言葉にうなずくベアトリス。 「そうね。そのメイジのところに訪問して、作ってる品が噂通りのものか確かめさせて もらいましょう。それに、そこまでのものを作り出したということは、そのメイジは色んな 経験をしてるはずよね」 「はい。何でも家には猛反対されて、それで飛び出して身一つで今に至ってるとか」 「まるでミス・ウエストウッドみたいな足跡ね」 ツインテール娘が感想を述べた。ベアトリスは満足げだ。 「ますます気に入ったわ。そのメイジの体験談もティファニアへのお土産にしましょう。 自分の他に苦労を重ねてる人間の話、きっと喜んでもらえるわ」 「では!」 「決まりよ! 早速次の虚無の曜日に出かけましょう! それまでに情報を集めて、件のメイジの 居場所を突き止めるわよ!」 「かしこまりました!!」 張り切るベアトリスの号令に、取り巻き娘たちはピシッと背筋を伸ばして応答した。 そうしてやってきた虚無の曜日。ベアトリスは国に帰らせた竜騎士団の風竜を呼び寄せ、 噂の代用食品を作っているメイジがいるという場所まで飛んでいった。そこは学院から南、 トリステインとガリアの国境付近の平原だった。 それらしい場所はすぐに見つかった。建物らしい建物のない平原のど真ん中に、やたら大きくて 広いテントが張ってあったのだ。 「どうやらここで代用食を作ってるそうです。このテントの大きさ、工場といったところですかね」 テントの入り口の前に並んだベアトリス一行。ポニーテール娘がそう言う。 「確かに噂通り、儲けていそうね。今いるかしら」 「ごめんくださーい! 誰かいらっしゃいますかー?」 緑髪娘が声を張り上げて呼びかけると、テントの中から人の足音がこちらに近づいてきた。 「はーい。行商人さんですかー?」 入り口の布を開いて顔を覗かせたのは、成人するかしまいかという年頃の少女。化粧っ気が まるでないのでベアトリスたちは一瞬平民の召使いかと思ったが、右手には杖を握っていた。 自己紹介するベアトリス。 「わたしはクルデンホルフ大公国公女、ベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフ。 こちらに魔法で食品を加工している珍しいメイジがいると聞いて、後学のために見学させて もらいに来たわ。あなたがそうなのかしら?」 「まぁ、そうですか! クルデンホルフといえば、あのトリステインからの独立国の……。 はい、わたしがそうです。リュリュと申します」 リュリュと名乗った少女に、ベアトリスたちは意外に感じた。平民向けの食品を作っている 奇特な貴族というから、コルベールのような歳のいった学者タイプの人間を想像していたのだ。 驚きは表情に出ていたようで、リュリュは苦笑した。 「あはは、皆さんそんな顔をします。どうして君のような若い子が、ともよく聞かれますよ。 でもわたしはこれでも美食家を自負してまして、その嗜好が高じて自分で作る側になったんです」 自身の紹介をしたリュリュは、ベアトリスたちを大きなテントの中へ招く。 「入り口で立ち話も何ですから、どうぞ中へお入り下さい」 「忙しいところ、お邪魔するわね」 「いえ。わたしの活動を他国のお姫さまに興味を持っていただいたこと、望外の喜びです」 テントの中には大量の豆やその他の食料が詰まった袋や木箱がところ狭しと並べられていて、 まるで食料庫のような様相だった。リュリュはやはり噂通りの貴族で、ここは彼女の作業場なのだろう。 リュリュは手始めに、己の経緯を説明し出した。 「家を出てからは各地の美食の研究をしてたのですが、その内に世の中のほとんどの人が 美味しいものを食べられないことに気づきまして、それで魔法で代用食を作ることに思い 至ったのです。最初はそれっぽい出来損ないしか作れませんでしたが、修行の末に形に なったものを作れるようになったんです」 その修行にはタバサが関わっていたのだが、それはベアトリスたちの与り知るところではなかった。 「それからも努力を積み重ねて……今では、豆からこのような代用肉を作れるようにまでなりました」 リュリュが指した作業台の上に乗っている物を見やったベアトリスたち四人は、そろって驚愕した。 「えッ!? これが『錬金』で作ったお肉なの!?」 それはどの角度から見ても、万人に聞いても全員の答えが一致するであろう、紛れもない 牛肉だった。生肉をさほど見たことがないベアトリスたちでも、そうとしか言いようのない 代物であった。 「こ、これが本当に豆から作ったものなの!?」 「完璧な出来ですよ、ベアトリス殿下!」 「信じられないッ!」 想像をはるかに超える出来栄えに衝撃を受ける四人。 「実際に『錬金』するところを実演致しましょうか」 リュリュは新たに豆をまな板に乗せ、呪文を唱えて『錬金』を掛けた。果たして豆は、 先ほどのものと同じ肉に変化した。 「す、すごい……!」 ベアトリスたちは口が開きっぱなしになった。学院で土系統の授業を担当するシュヴルーズも、 リュリュの『錬金』の見事さには帽子を脱ぐことだろう。 ベアトリスらは思わず拍手までしていた。 「ありがとうございます。この『錬金』の技を、実家が雇った他のメイジの方々に伝えたことで、 実家はすっかり代用食の販売を副業にしてます」 「この『錬金』、わたしにも出来るようになるでしょうか!?」 ツインテール娘が興味を示して尋ねたが、 「ええ、もちろん。ただそのためには、断食をして食のありがたみを心の底からご理解いただくまで 飢えてもらうところから始めていただきますが」 「……やっぱり、遠慮しますわ……」 リュリュの返答にげんなりした。さすがにそこまでして技を身につけようとは思えなかった。 「見事な『錬金』だったけれど、そのためにこんなに大きなテントが必要なの?」 ふとベアトリスが気になって尋ねかけると、リュリュは次のように返答した。 「ああいえ、ここで行ってるのは『錬金』による代用食の生成だけではありません」 「と言うと?」 「実際にご覧になっていただいた方が早いですね。どうぞこちらへ」 リュリュが四人を連れて、仕切りのカーテンを開いた。その奥にあったのは……。 「これは……ブドウ畑?」 テントの中に木々が並んでいて、その木の一本一本にブドウの果実がたわわに実っていた。 天井の布は開閉するようになっていて、太陽光を取り込める手の込んだ仕掛けが施されている。 「へぇ。農業までやってるのね」 リュリュは肯定するも、その次に信じられないようなことを言った。 「でも果実と枝は確かにブドウですが、幹はこの地に元々生えてた別の種類の木なんですよ」 「……えぇぇッ!?」 またも驚愕させられるベアトリスたち。 「う、嘘でしょう!? 違う木に、枝だけくっつけて、果実が育つなんてことッ!」 「『接ぎ木』と言いまして、植物同士の組織を馴染ませれば、違う木に接ぎ合わせても問題なく 果実が出来るんです。本当は近い種類でないと上手く行かないのですが、研究と実験の結果、 水の魔法を用いることで完全に異なる種類の樹木同士での接ぎ木に成功しました。やりように よっては育成期間の短縮も出来るので、この技術が広まれば世界中でワインの生産量や果物の 収穫量が格段に増加することでしょう」 ハルケギニアでは接ぎ木の概念はまだ確立されていなかった。当然初めて知った知識と、 それを編み出して実用化しているリュリュの仕事に、ベアトリスたちは最早声もない。 リュリュは更に別のスペースに案内する。そこは麦畑になっていた。 「ここの畑の土壌は、あえて痩せた土を使用してます」 「痩せた土って……麦がいっぱいに生えてるんだけど……」 「砂漠のような過酷な環境下でも成長する麦を作る実験です。やがては如何なる作物も、 場所を選ばずに栽培できるようにすることを目標にしてます。わたしの夢は世界中の人の 元に配れるほどの量の食料を作れるようにして、誰もが美味しいものを食べられるように することなんです」 既に品種改良の領域。リュリュのスケールの大きさに、ベアトリスたちはすっかりと 呑み込まれていた。よもやこれほどの大事業を手掛けていたとは、ここに来るまでは想像も していなかった。 ポニーテール娘が興奮した声を上げる。 「すごすぎます! ミス・リュリュ、あなたは天才ですわ!」 称賛するも、リュリュはどういう訳か苦笑した。 「いえ、偉そうに説明しましたが、接ぎ木以降のことはわたしの発想ではないんです。ある方から 知恵と技術を貸してもらいまして」 「あら、協力者がいるのね」 自分たちの背後の仕切りの向こうから物音と気配がしたので、ツインテール娘はそちらへ振り返った。 「その方って、こちらにいらっしゃるんですか?」 「あッ! ちょっと待って下さい……!」 リュリュの制止も待たずに、ツインテール娘は勝手にカーテンを開けた。すると彼女たちの目に 飛び込んできたのは、 「ファントーンッ!」 オレンジ色の身体、突き出た目と人を丸呑みに出来そうなほど巨大な口を持った怪人の姿だった! 「きゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ―――――――――――――――――――――――ッッ!!!?」 度肝を抜かれたベアトリスたちは、恐怖に襲われて大絶叫を発した。 怪人は数え切れないほどの歯が並んだ口を開く。すわ食らいついてくるとベアトリスたちは 震え上がったが、 『運命の俺達はひとつきりの傷だらけでシュートを深海に落とします』 怪人が全く意味不明のことを口走ったので、違う意味で硬直してしまった。 「……?」 頭の上に?マークが浮かんでいると、怪人は己の喉元をトントン叩いた。そして言う。 『いやぁ~えらいすまんなぁお嬢ちゃんたち! どうもここんところ、翻訳機の調子が悪ぅてな! せやけどわては宇宙なまりが強いさかい、訳せるもんがなかなかないんや。まぁ堪忍してや!』 翻訳してもかなりなまっている台詞に、ベアトリスたちは呆気にとられるばかり。 「あ、あの、ミス・リュリュ……こちらの方? はどなたですか……?」 緑髪娘がリュリュに尋ねると、リュリュは怪人の隣に回りながらベアトリスたちに謝った。 「すみません、驚かせてしまいまして。こちらはわたしの夢に協力して下さってる、グルメン博士です」 『ファントン星人グルメンっちゅうもんや。よろしゅうおま』 ベアトリスらはしばし呆然としていたものの、我に返ったベアトリスがファントン星人 グルメンなる者を指差した。 「こ、この亜人、噂に聞くウチュウ人ではないの!? ということは、侵略者ではないのかしら!?」 再度怯えるベアトリスたちだが、グルメンは弁明する。 『確かにわては宇宙人でっせ。けど侵略するつもりなんてこれっぽっちもありまへんわ。 わては研究のために来ただけやで。侵略者はとにかく目立ちよるからなぁ。すぐ同じに 見られて、ほんに迷惑しとりますわ』 「わたしも初めて博士と会った時にはびっくりして腰を抜かしましたけど、悪い人ではないことは 保証しますよ。何を隠そうこの実験農場が、博士のお力添えの賜物なんです」 「そ、そうなの……」 ひとまず適当なところに腰を落ち着かせたベアトリスたちは、グルメンから彼の話を伺う。 『わてらの種族は大食らいでな、慢性的な食料不足に悩んどるんや。そんであちこちの星に 食べもんを探しとってな、わても色んな星の食料の研究を生業にしとるんや。そんでハルケギニアに 来て、このリュリュはんと出会ってな、住む世界は違えど同じ志を持っとるっちゅうことに感動して、 一緒に研究をしとるって訳ですわ』 「博士には本当にお世話になってます。博士なしには、わたしは自分の夢にここまで近づけませんでした」 『わてもリュリュはんの魔法には助けられとるでぇ。その力を再現できるようになれば、 ファントン星の食料問題もぐっと解決に近づくわ。わてもリュリュはんに会えて、ほんに 良かったと思っとるよ!』 「まぁ、博士ったらお上手ですね」 二人で盛り上がっているリュリュとグルメンをながめて、取り巻き娘たちがヒソヒソと ベアトリスに囁きかけた。 「ベアトリス殿下、どうします……? あのウチュウ人のこと、トリステイン王宮に通報しますか?」 「うーん……でも、確かに悪いことはしてないみたいだし……」 「でもウチュウ人ですよ」 ツインテール娘がそう言うと、ベアトリスは若干達観した目で返した。 「けれど、自分たちの夢のために頑張ってるあのお二方の姿勢……まるでティファニアみたい じゃない?」 「あッ……言われてみれば」 「見た目は全然違いますけどね……」 内心尊敬の念も抱いているティファニアのことを思い出すと、取り巻き娘たちもグルメンに 対しての警戒心は薄れた。 「二人のやってることは、実に見上げたものだわ。わたしたちが変な茶々を入れるのはよしましょう」 「そうですね……」 「さすが殿下ですわ!」 ベアトリスたちはリュリュとグルメンとの話に戻り、リュリュがベアトリスたちに打診する。 「そろそろお昼の時間ですし、せっかくですから皆さん、わたしたちの作った食品を召し上がって いきませんか? 貴族の方のお口に合うかはまだ不安ですが……」 「いえ、心配しないで。ありがたくご馳走になるわ」 「本当ですか!? それではお待ち下さい、すぐにご用意しますから!」 リュリュは俄然張り切って厨房に向かっていく。ベアトリスたちは微笑んで彼女の背中を見送った。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6109.html
前ページ次ページゼロの使い魔は魔法使い(童貞) このトリステイン魔法学院には宝物庫というものが存在する。 その中ある宝物を盗もうと企んでいる盗賊がいた。その名も『変わり身のフーケ』 彼女からトリステイン学院に予告状が送られてきたのが先日の話だ。 『あなたの学院の宝物庫からあるものを盗みます フーケ』 変わり身のフーケという二つ名は周りの人物が畏怖をこめてそう呼んでいるものだ。 彼女は戦闘中にある姿に変わりその姿を見たものの命はないという。 「ねえ……どっかで聞いたことある事と思わない?」 「……っえ?」 ルイズとエイジは宝物庫の見張りをしていた。 二人して扉の前に座り込み、ルイズはフーケによる被害状況がかかれた紙を眺めていてエイジにそんな質問をしたのだ。 「あんたの"魔法"と似ている気がするのよ。戦闘中に姿を変えるとか、魔法を見たものの命はないとか。」 「気のせいじゃないんですかね……ハハハ……」 エイジは空笑いをするしかなかった。自分と同じ"萌"属性の魔法使いなどこの世界にはいないと思っていたのに。 萌属性の魔法使いが俺一人だったら、姿はあれだけれども 俺TUEEE状態になってモテモテになって王侯貴族になって、ハーレム、ハーレム、ハーレム! ……なのにっ! なのにっ!!! 「なんで俺の邪魔をするんだよおおおお」 「ってあんた、煩悩丸出し。まだフーケが"萌"属性の魔法使いって決まったわけじゃないのに。」 「すいやせん。取り乱してしまいやした……」 そのままエイジは黙り込んでしまった。ルイズもつられて黙り込んでしまう。 ずっとそんな状態で朝まで迎えるのだろうか。と思ってたらエイジの目がカッと開いて急に立ち上がった。 「どうしたの!?」 「何かが…来やす」 はたしてそれは窓から急にやってきた。 「危ない!」 エイジはガラスの破砕からルイズをかばい、目の前の敵を見定める。 目の前の敵は茶色いフードを被っていて姿を確認することは出来ない。しかし、わずかに見えた口元がにぃ…と歪むのが見えた。 「パソピア!!!」 ボンという爆発。これは"萌"属性の魔法使いの特徴。もはや決定的だった。 「変わり身のフーケ」その正体は"萌"属性の魔法使いだったのである。 「マジカルチェーンジ!!!」 彼女は手に持っているステッキを一振りさせて自分自身を眩い光に包ませる。 「なっ、なによこれ!? 全然前が見えないじゃないのよ!」 エイジはその光をものともせずただじっと見つめていた。 「……確かに全然見えやせん。朝アニメでももうちょっと見えるんですがね。」 つまり彼女が変身している間二人は一切の攻撃をする事が出来なかったのだ。 「何っ!」 彼女の姿は全身を紺色のスクール水着で覆い、頭には小学生とかが被る黄色い帽子をしており、下は白いストッキングを履いていてなぜか右足のほうだけずり落ちていて生足を露出させていた。 よくみると背中にはランドセルを背負っておりオレンジ色のカバーをしたリコーダーがはみ出している。 これが変身した「変わり身のフーケ」であった。 「……あんた何よ、その格好! 年ってものを少し考えなさいよ!!」 「うっさいわね! これが一番最適な衣装なのよ!」 「どこがよ! ただの年増女が無理して変な服を着てるだけじゃない!」 「変な服って言うなぁ!!!!」 ルイズが顔を真っ赤にしながら突っ込んだ。フーケも羞恥で顔を真っ赤に染める。 「はぁはぁ………」 「とぁっ!」 「はうっ!」 そんな様子のエイジを見てルイズは喉元にチョップを食らわせた。エイジは悶えながら床を転げまわった。 転がりまわったところでふと地面を見るとフーケの素足が見えた。 そして、改めて変身姿のフーケを眺める。そして一言 「キレイだ………」 エイジはすっかりフーケに見とれてしまっていた。そしてフーケから追い討ちをかける一言が 「エイジ君………きれいなおねえさんって、好き?」 「うん。ぼくちんきれいなおねえさんだいしゅき!」 いつの間にか赤ちゃん言葉になっているエイジが彼女に感じている"萌え"という名のエナジーは臨界点を突破しつつあった。 おねえさん、ランドセル、スク水、通学帽、たてぶえ、処女、羞恥、羞恥、羞恥、羞恥………そして手に持っているステッキ……ステッキ!? 「死になさい」 フーケがにやりと笑うと見る見るうちにステッキが光り始めた。 「マジカルコケティッシュウェーブ!!!!」 「!!!!」 ステッキから鋭い光線のようなものが放たれた。エイジは直下でもろに食らってしまいたちまち吹き飛ばされた。 「ぐわぁっ!!!!」 「エイジっ!」 あの魔法使いであるエイジを子ども扱いしたのだ。到底ルイズに敵う相手ではなかった。 「エイジ、あなたには"萌"が足らないのよ」 フーケはそう吐き捨てた。エイジもルイズも動くことが出来なかった。 「この"萌"パワー(略称:MP)は自分から補給するだけではない。他者から得た"萌"の感情もパワーに変えることが出来る! 私にやられたやつらもみんな私に萌えて死んだ。文字通りの『萌え死に』だったのよ!!」 「くっ………」 エイジは舌打ちした。いくら年上とはいえまだ20代前半の若くて綺麗なおねえさんだ。そんなお姉さんがあんなロリロリした衣装を着てたりなんかしたら…… 「自分、もう辛抱なりませ(ドゴッ)ぐはぁっ」 「だから煩悩をそのまま口に出すなぁ!!」 思わずルイズは突っ込みを入れてしまった。それに気づいたルイズははっとなり杖をとってフーケのほうに向けた。 「ほう……あんただけは私と戦う気かい? でもね狙いはあんたなんかじゃないんだよ!」 そしてフーケはどこからともなく特大注射器を取り出した。 「よっ、よせっ!! やめろっ!!!」 ドスッ 「ぎゃああああああああ!!!!!」 エイジの尻に特大の注射器が差し込まれた。エイジの体から魔法力がどんどん吸い取られていく。 「ああああああっ!!!!」 きゅぽん。 注射器が抜かれた。エイジが「パピコン!」と唱えても、もうステッキが出ることは無い。 「魔法の使えないあなたは変態……いいえただのド変態よ!」 フーケの体が光りだす。どうやら先ほどの一言によってまたパワーアップしたようだ。 「これで死ねっ! マジカルコケティッシュウェーブ!!!!」 フーケの魔法が放たれたその時、一頭の竜がルイズの前を掠めていった。 大きな爆発の後、そこには何も残っていなかった。 「………消えた!」 目の前の獲物が消えたのにどこか嬉しそうに微笑むとフーケはゴーレムで宝物庫の壁を壊しにかかった。 「間に合ってよかったわ………」 ルイズ達をドラゴンに乗せた彼女は思わず息をついた。 「何のつもりよキュルケ! これから私があのフーケをけちょんけちょんに倒してやるところだったのに……」 「お嬢さん……」 「何よ! この使い魔だってなんか変なものに刺されてたし、 あんたじゃあの『変わり身のフーケ』に勝てるわけ無いじゃない! せっかく助けてやったんだから少しは感謝しなさいよ!」 「べっ、別に好きで助けてもらったわけじゃないんだから!! ……でもちょっと感謝してるわ。 えっ、ええ!ちょっとだけ、ちょっとだけ感謝してあげるわ。これでいいかしら?」 「最高です!」 「あんたは黙ってなさい!」 ルイズが暴れようとしてるところを慌てて取り押さえるキュルケ。 一方竜の持ち主である彼女はただ前を見つめて小さくこう言った。 「学院長室へ向かうわ。スピードをあげるからしっかりつかまってて。」 スピードがあがってルイズもキュルケも竜にしがみついている中で、 ずっとエイジは自らの傷だらけになった右手を見つめていた。 前ページ次ページゼロの使い魔は魔法使い(童貞)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9184.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第六十一話「疑心の雪山(後編)」 氷超獣アイスロン 雪超獣スノーギラン カプセル怪獣アギラ 登場 アンリエッタの命により、シティオブサウスゴータに駐屯する敵兵を『虚無』で打破するために ゼロ戦で飛んだルイズと才人。しかし猛吹雪の中から姿を現したのは、ヤプール人からの刺客、 超獣アイスロンであった。攻撃を受け、雪山の中に不時着する二人。下山の最中、自分たちを迎撃に出て アイスロンの攻撃に巻き込まれた竜騎士を発見。彼も連れていくこととなった。 アイスロンは未だ自分たちを探している。三人の逃走は成功するのだろうか? 「……では、あれは飛竜ではなく、新しい魔法兵器なのか?」 雪山からの下山の途中、アルビオン空軍のヘンリー・スタッフォードと名乗った竜騎士は、 才人に背負われながらゼロ戦について尋ねた。それに曖昧な返答をする才人。 「まぁな……。軍事機密だから、これ以上は話せないけど」 「そうか……。ウィンザーより飛行速度が速かったのは、そのためか……」 「……ごめんなさい」 ヘンリーの火竜の件について、ルイズが謝罪した。が、ヘンリーは呆れたように鼻を鳴らす。 「謝ってどうする。殺さなきゃ殺される、それだけだろう」 そのひと言に、才人が顔をしかめた。 「俺は、たとえ戦争でも、人殺しに慣れたくない……」 「何だと?」 「恩師の先生が、そう願ったんだ。それに俺だって……祖国のためだろうと、何だろうと、 死ぬのはごめんだ。人殺しも嫌だ」 その才人の言葉に、ヘンリーは思わず笑った。 「おかしな奴だな。妙な新兵器に乗って、敵地の真ん中まで来たくせに……。貴様は何のために戦う?」 「そんなこと……わかんねぇ」 才人は今日までゼロとともに過酷な戦いをくぐり抜けてきたが……その動機を、自分自身で よく把握していなかった。戦いの時は、知らず知らずの内に身体が動くのだ。 戦う理由を、あえて言葉にするのなら……。 「ただ、好きな人、大事な人たちを守るため……それなら戦える」 それだけであった。誰かの命が危険に見舞われる……その時に守りたいという強い想いが生じて、 才人の力の源となるのだ。 ヘンリーはこう聞き返す。 「好きな人……ルイズか?」 不意打ち気味なひと言に、ルイズも才人も一瞬動揺した。 「あッ、いや……! ルイズだけじゃなくて、学院のみんなとか……トリステインの姫さまだって、 危険な目に遭ったら、守ってあげたいっていうか……。でも、政治の都合で誰かを殺せって 命令されても、俺は断る」 「……」 才人の語った思いを聞いて、ヘンリーは複雑そうに顔をしかめた。兵隊であるヘンリーは、 ある種才人の対極なのだ。 それを察したルイズが告げる。 「気にしないで、ヘンリー。こいつは貴族じゃないから、名誉とか誇りとか、分からないのよ」 「ああ、分からねぇよ。分かりたくもない! そんなもんのために死んだり、誰かを殺したりしたって しょうがねぇだろ!」 語気を荒げて反発する才人。彼は、その貴族の価値観というものがどうしても受け入れられないのだ。 「しょうがないとは何よ! 名誉は貴族にとって、一番大事なものなのよ! ねぇ、ヘンリー!」 「あぁ……」 ルイズはヘンリーに同意を求めたが、彼は妙に力のない返事をした。そしてつぶやく。 「しかし、好きな人のためなら戦える、か……。僕も、そんな風に言ってみたいものだな……」 「え……?」 「ただ、愛のためだけに生きられたら……と。ところが貴族って奴は、名誉のためなら好きな人との 別れも辞さないものなんだ……」 それを聞いて、ルイズが尋ね返す。 「さっきの絵の人……?」 ヘンリーが才人と揉め合った際に、彼が落としたロケットをルイズが拾って返したのだが、 その時に中の絵が見えたのだった。ヘンリーと同い年くらいの美少女の絵が収められていた。 「あの人と、お別れしちゃったの……?」 「……そうさ。僕は許嫁との婚約を解消してから軍に志願した」 ヘンリーの告白に驚く才人。 「どうして……?」 その理由を、ヘンリーは次のように語った。 「今回は生き延びたが、この戦争が続くならいずれは死ぬ。生きて帰れないなら、別れるしかないじゃないか」 「そんな……」 ルイズは何と言っていいか分からずに目を伏せるが、才人はまっすぐに言い放った。 「お前、最低の男だな」 「何ぃ!?」 憤るヘンリー。しかし、才人はひるまず続ける。 「男として最低だって言ったんだ!」 「き、貴族を愚弄するのか!?」 「貴族が何だ! 名誉のために死ぬなんて、ただのアホじゃねぇか!」 「貴様ぁぁぁッ!」 怒りが頂点に達したヘンリーは才人を押し倒し、また取っ組み合いの喧嘩となった。 「侮辱は許さんッ!」 才人の頬をしたたかに殴るヘンリー。すると才人もやり返す。 「テメェ、そんなに死にたいのかよッ!」 ヘンリーに馬乗りになって拳を振り上げる。衝撃に備えて目をつむるヘンリー。 だが、才人の拳はヘンリーの顔の横を叩いた。 「ヘンリー……お前だって、貴族である前に人間だろ! 男だろ! 何が何でも生き延びて、 彼女のところへ帰ろうとは思わないのか!? 格好ばっかつけてんじゃねぇッ!」 才人に叱咤され、ヘンリーは目が覚めたような表情になる。 「しかし……」 一方で、ルイズはこう告げた。 「貴族が戦争に行く以上、死のことは覚悟しなければならないわ」 「お前……!」 「でも」 と、ルイズは区切った。 「初めから死ぬ気だなんて変よ。死ぬのは……最後の最後でしょ。その時が来るまでは、 生きるために頑張るのよ!」 「そうだよ……。その通りだよ、ルイズ!」 そのルイズの言葉に、力いっぱいに同意する才人。 「ヘンリー、生きて帰って。そして彼女と結婚して!」 「結婚……」 「婚約を解消されたって、彼女はきっと待ってるわ! あなたが帰るのを……」 ルイズの説得でも、ヘンリーは口の端に苦笑を浮かべた。 「そうだな……君たちの言う通りだ。死ぬために戦うなど、どうかしていたとしか言いようがない」 ヘンリーが考えを改めたので、才人とルイズは顔を見合わせて微笑した。 「僕も、生きるために戦うとしよう。そもそも、昨今のアルビオン軍はおかしいことだらけだ。 このままつき合っていて本当にいいのか、ということはいつも心の片隅に抱えていた。 努めて考えないようにしてたのだが……」 「おかしいことだらけ?」 才人が聞き返すと、ヘンリーはアルビオン軍の内情を話し出した。 「どこからともなく表れた「ウチュウ人」とかいう怪しい異形の連中と同盟を組むだけでも 本来なら受け入れがたいことなのに、クロムウェル皇帝陛下は国土防衛に消極的すぎるのだ。 軍のほとんどを首都ロンディニウムに留まらせたまま動かそうとせず、各拠点の守備にも 必要最低限の兵力しか裂いていない。そもそも空港の防衛にも、必要とされるだろう数の 半分程度しか軍艦を出されなかった……」 連合軍側がアルビオン上陸作戦で大勝したのは、ルイズの『イリュージョン』の陽動が 成功したのもあるが、実はそれ以上に敵艦隊が異様に少なかったのが理由なのだ。これには 連合軍首脳部も逆に戸惑いを見せた。 「わざと敵軍を上陸させたとしか、僕には思えない。皇帝陛下が何を考えておられるか、 全くもってサッパリだ。今度も、シティオブサウスゴータを放棄せよとの前代未聞な命令が届いたし……」 「えぇ? そんな命令が出てたの?」 目を丸くするルイズ。確かに空から見た時、守衛が妙に少なかったのだが、まさかそんな動きが されていたとは。 「ただし、街中の食料を出来る限り持って退却せよとのことだった」 「食料を? そんなことしたら大変じゃないの!街中が餓えちゃうわ」 シティオブサウスゴータは決して小さくない街。戦時中でも、民間人は多くいる。そこから食料を 根こそぎ持っていったら、たちまち人々は飢餓してしまうことだろう。そんなことになったら、 現政府が強く恨まれるのは必至。食べ物の恨みこそが最も大きいものなのだ。 国土を敵に蹂躙されるのを放置した挙句に、自国民を虐げるような真似をして、何のつもりなのだ? 「いざという時は、オークなどの亜人の独断ということにするみたいだ。そのために駐屯兵は、 亜人が中心の構成になってる」 「それでも……奇妙を通り越して異常な作戦よ。何が狙いなのかしら?」 「恐らく、敵軍をシティオブサウスゴータで足止めすることだと思う。戦争に勝ってアルビオンを 占領した時のことを考えれば、市民を見捨てる訳にはいかないだろう?」 ヘンリーの言うことはもっともだ。それに、カツカツの兵糧を市民に分け与えたら、大軍は本国からの 補給がない限りは行軍が出来なくなる。兵隊も人間だから、食べねば力が湧かないのだ。 「でもさ、そんなこと俺たちに話しちゃって大丈夫なのか?」 「どうせすぐに分かることだろう。それは皇帝陛下もご理解されているはずだ」 才人の問いにぶっきらぼうに答えるヘンリー。確かにそこまであからさまだと、足止めだと 気づかない方が無理あるだろう。それに分かっていても、アンリエッタの性格を考えれば、 シティオブサウスゴータを見捨てるという選択がなされるはずがない。 ここで才人は、嫌な予感を強く覚えた。ヤプール人は狡猾な奴らだ。ここまでの奇妙な作戦に、 何か裏がないはずがない。まるで道を譲るような行動をアルビオン軍にさせることで、連合軍に 快進撃をさせているが、見方を変えればそれは双方の軍に大きな損傷を出させていないということ。 当然、ヤプールが善意で被害を出さない訳がないのだ。絶対に、何かを狙っている。 「シティオブサウスゴータで足止めされたら、確実に始祖ブリミルの降臨祭に入るわね。 ハルケギニアの慣習で、降臨祭の間は行軍をやめて、夜通しのお祭りが開催されるわ」 と、ルイズは説明した。『降臨祭』……ヤプールが何かを仕掛けてくるタイミングはやはりそこか。 何をしてくるのかは知らないが、用心せねばなるまい……。 才人が考えていた時、 「キョォォオオオオオオ!」 「はッ!?」 遠くから耳をつんざく雄叫びが聞こえ、次いでドスンドスンと大きな震動を感じた。森の向こうを 見れば、雪山の陰からアイスロンがぬっと顔を出したところだった。 「キョォォオオオオオオ!」 アイスロンは足元をキョロキョロ見回しながら、徐々にこちらへと近づいてきている。 しかし歩幅が大き過ぎるので、一歩毎に長い距離を一気に詰められる。 「くそッ、追いついてきたか……!」 「サ、サイト、どうしよう!?」 焦るルイズ。今の状況では、自分たちで太刀打ちすることなど土台無理だ。発見される訳にはいかない。 そこで才人は指示する。 「あっちはまだ、俺たちの存在に気づいてない。なるべく木の陰に隠れるようにして、奴の視界から 逃れながら慎重に逃げよう」 そうと決まったら、早速行動だ。才人たちはアイスロンの顔の向きに注意しながら、木の幹に 飛び込むように移動する。目がこっちに向いた時には、木の陰から動かずにじっとやり過ごす。 「キョォォオオオオオオ!」 慎重に慎重を重ねた甲斐があり、アイスロンはこちらには気がつかずに山脈の奥へと通り過ぎて いこうとしていた。ふぅ、と安堵の息を漏らす才人。ルイズとヘンリーを安全な場所まで連れていったら、 その時こそやっつけてやる。 と考えた、その時、 「ガアアアアァァァァ!」 「えッ!?」 アイスロンの反対方向から、別の鳴き声が耳に入った。才人たちがバッと振り返ると、 そちらからは青白い身体と真っ赤な顔面、ガスマスクのように長い口吻を生やした巨大怪物が 接近してくるところだった。 あれは雪超獣スノーギランだ! 「な、何……!? 超獣は一体だけじゃなかったのか!」 ショックを受ける才人。それだけではない。スノーギランの鳴き声により、アイスロンも こちらの存在に気がついて振り返ったのだ。 「キョォォオオオオオオ!」 「ガアアアアァァァァ!」 二方向から迫る大超獣。三人は逃げ場を失ってしまった! 「た、大変! どうしたら……!」 「くそッ、こうなったら!」 事ここに至り、才人は決心した。ヘンリーを木の根元に降ろし、ウルトラゼロアイ・ガンモードを出す。 「俺が囮になる! ルイズとヘンリーは隠れてるんだ!」 「き、危険すぎるぞ! 待てッ!」 ヘンリーの制止を振り切って飛び出した才人は、レーザー光線を二体の超獣に食らわせて 気を引きつけながら離れていく。 そして十分距離を取ったところでゼロアイを開き、変身の構えを取った。 「よし、これで――!」 しかしゼロアイを装着する寸前、ある考えが頭をよぎった。 (――ここで助けても、ルイズとヘンリーは戦争に戻るだけではないのか?) 二人とも、戦争の途中で軍を抜けるような真似はしないだろう。となったら、今ここで助けても、 二人はまた死地に飛び込んでいくのではないか。生き抜くために戦うと言っても、そのために他者を 犠牲にするというのは、正しいことなのか……。 が、才人は頭をブンブン振って一抹の考えを払った。 「今はこんなことを考えてる場合じゃないだろ! デュワッ!」 自分に喝を入れて、ゼロアイを装着。みるみる内に巨大化して変身、ウルトラマンゼロへと変わる! 『よぉし、行くぜッ! とぁッ!』 「キョォォオオオオオオ!」 「ガアアアアァァァァ!」 ゼロはすぐに、己を挟み撃ちにしている二体の超獣の内、アイスロンの方へ殴りかかっていく。 だが、 「キョォォオオオオオオ!」 『ぐわッ!?』 アイスロンのカウンターパンチを食らって、雪の上に倒れ込んでしまった。 『ぐッ……せぇぇぇいッ!』 直ちに起き上がって、今度はスノーギランの方へハイキックを見舞ったが、易々と受け止められて 弾き飛ばされた。背中から雪山の岩肌に叩きつけられるゼロ。 『うわぁぁぁぁッ!』 「ゼ、ゼロ……どうしたのかしら……?」 隠れて戦いを見守るルイズが、ゼロの苦戦に目を見張った。二対一という不利はあるのだが、 それ以上にゼロそのものに苦戦の理由があった。何せ、今の彼の動きは、格闘の素人も一目瞭然な くらいに普段よりも鈍いのだ。技のキレも、身のこなしの速さもない。 『くぅッ……一体どうなってるんだ……? 身体が重すぎる……!』 それは他ならぬゼロ自身が感じていた。彼は己の異常に戸惑う。力が、いつもの半分も出ていない。 「キョォォオオオオオオ!」 「ガアアアアァァァァ!」 しかし超獣たちは容赦なく攻撃をしてくる。アイスロンは口から、スノーギランは口吻と両腕から 猛烈な冷凍ガスを噴射して、ゼロを凍らせようとしてきた。 『うおおおああああああああッ! ぐぅぅッ!』 怒濤の吹雪を浴びて苦しめられるゼロだが、どうにか横に跳びすさって冷凍ガスを回避。 格闘が駄目ならば、と、光線技の構えを取った。 「シェアッ!」 スノーギランへ向けて、額のビームランプからエメリウムスラッシュ! ……だが、緑色のレーザーは途中で途切れ、スノーギランまで届かなかった! 「えぇッ!?」 『んなッ……!?』 愕然とするルイズとゼロ。光線が効かないということは何度かあったが、どんなに追い詰められていても、 光線が敵まで届かないというのはこれまでに一度だってなかったことだ。一体、ゼロはどうしてしまったのか? 更には、カラータイマーがピコンピコンと鳴り出す。 『な、何!? もうエネルギー切れが近いのか!?』 ウルトラマンゼロは、地上では三分間しか活動できない。限界時間が近づくと、胸のタイマーが赤に変わって 警告する。……だが今はまだ三十秒も経っていないぞ! どうしたゼロ! 気が早すぎるぞ! ウルトラマンゼロ! 「ガアアアアァァァァ!」 だが超獣たちは攻勢の手を緩めない。スノーギランは頭部から視力を奪う失明閃光を発した。 『ぐぅぅぅぅぅッ!』 腕を顔の前に回して何とかガードしたゼロだが、大きくひるむ。その隙を突いて、アイスロンが ゼロを殴り倒す。 「キョォォオオオオオオ!」 「ガアアアアァァァァ!」 『うわぁぁぁぁ――――――――!!』 二体の超獣はゼロをボコボコにタコ殴りにする。ゼロ、まさかの絶体絶命! 『くッ……こうなったら……!』 するとゼロは、今出来る最後の手段に出た。 『出てこい、アギラ!』 素早くカプセルを投げ飛ばし、雪原の上にアギラを実体化させたのだ。 「キギョ――――――ウ!」 カプセルから飛び出したアギラはすぐさま、ゼロを袋叩きにする超獣たちに飛びかかっていく。 突進でアイスロンを張り倒し、角をスノーギランの脇に突き刺した。 「キョォォオオオオオオ!」 「ガアアアアァァァァ!」 不意打ちを食らった二体は飛び跳ねて挑発するアギラを追いかけてゼロから離れた。ゼロはその間に 息を整え、体勢を立て直す。 「キョォォオオオオオオ!」 「キギョ――――――ウ!」 アイスロンは冷凍ガスを吐いて攻撃するが、アギラは素早い動きでアイスロンを翻弄する。 そこをスノーギランが失明閃光を放とうと狙う。 「ガアアアアァァァァ!」 「キギョ――――――ウ!」 スノーギランから発射される失明閃光! しかしアギラはその瞬間に飛びのき、閃光は背後の アイスロンに命中した。 「キョォォオオオオオオ!?」 目が見えなくなったアイスロンはパニックになってしっちゃかめっちゃかに冷凍ガスを撒き散らし、 それがスノーギランに当たる。 「ガアアアアァァァァ!」 「キョォォオオオオオオ!」 憤慨したスノーギランがアイスロンを殴り、アイスロンも殴り返す。超獣たちは仲間割れを 起こして争い出した。 「シャッ! セアァァァァッ!」 そこにゼロスラッガーを握り締めたゼロが突撃していった。振り向いたスノーギランの急所を ふた振りの刃で的確に切り裂く。 「ガアアアアァァァァ……!」 喉を断たれたスノーギランはたちまち絶命。バッタリと倒れ込む。 「ジュワアァァッ!」 そしてゼロはL字に組んだ腕をアイスロンの身体に押しつけ、ゼロ距離からワイドゼロショットを 見舞った! 途中で消える光線も、こうすれば確実に命中する。 「キョォォオオオオオオ!!」 その一撃でアイスロンはたちまち爆散。後には肩で息をするゼロだけが立つ。 『ふぅぅ……どうにかなったぜ……』 どうにか危機を脱したゼロは、アギラに振り返って声を掛けた。 『すまなかったな、こんなことで呼び出して』 カプセル怪獣は基本的に、変身できないような状況のための代理戦力。自分が助けてもらうために 出すのは、前代未聞のことであった。 「キギョ――――――ウ!」 しかしアギラは特に気にしていないという風に跳びはねた。苦笑したゼロは、アギラをカプセルに戻す。 自分もゼロアイを取り外し、才人の姿に戻った。すると一番に才人が尋ねかける。 「ゼロ、どうしたんだ? 今日はすこぶる不調だったじゃないか。具合でも悪いのか?」 それにゼロは、このように答えた。 『いや、俺には何の異常もない。異常があるのは……才人、お前の方にだよ』 「え……?」 予想だにしない返答に立ちすくむ才人。ゼロは彼に指摘する。 『今のお前は、ルイズたちを守ることに疑問を抱えてるだろ。その疑心が足枷となって、 力の発揮を妨げたんだ。一心同体である以上、俺はどうしてもお前の影響を受けるからな』 「そんな……」 ウルトラマンと一体となった人間は、時としてウルトラマンに大きな力を与えてきた。 しかし、その逆もあり得る。かつてゼロと一体化したタイガという青年は、『ウルトラマン』として 戦うことに懐疑的だったので、その時のゼロは中途半端な大きさにしか巨大化できなかった。 今の才人は、似たような状態に陥ってしまっているのだ。 「ガンダールヴと同じさね」 デルフリンガーが意見した。 「ガンダールヴの強さは心の震えで決まる。相棒の心は震えてねえのさ。今、おめえさんは 主人と背負ってる奴らに疑いを抱いてる。自分が守るに値するのかって、疑ってる。 それじゃ感情が震えるわけねえよ」 「……」 確かに今、才人は戦いを仕掛ける人たちを守ることに、どうしても納得することが出来ないでいる。 ゼロはその辺を割り切っているのだが、年若く、青臭さが抜け切れていない才人に納得しろというのは酷なものだろう。 しかし……もうすぐヤプールとの決戦が近そうなのに、こんな状態で大丈夫なのだろうか? 『……だがまぁ、心配するなよ! こっちにはウルティメイトフォースの仲間もいるんだし、 ちょっと調子悪くたって、ヤプールくらい異次元から引きずり出してパッパッと片づけてやるさ!』 ゼロがそう言って慰めたが、それが虚勢であることは明白だった。 ショックを受けた才人はおぼつかない足取りで、ルイズたちのところまで戻っていった。 その後、騒ぎを聞きつけたのかアルビオン側の捜索隊が才人たちの近くまで迫り、ヘンリーは彼らの 元へ帰っていった。その際、借りを返すためかルイズたちが別方向へ逃げたと虚偽の報告をしたことで、 ルイズと才人は無事に連合軍に救出された。 ヘンリーの言った通り、連合軍がシティオブサウスゴータに踏み込んだ時にはもうアルビオン軍は 食料を持ち去りながら撤収していて、連合軍はやはり市民に兵糧を分け与えたことで足止めを 余儀なくされることとなった。降誕祭の祭りは、シティオブサウスゴータで行うことになる。 そして才人は……帰ってからもずっと塞ぎ込んでいた。それほどに、ゼロから言われたことが 衝撃的であったのだ。 その事情をデルフリンガーから聞いたルイズは、どうにか才人を励まそうと、こう告げた。 「サイト……色々言ったけど、あんたの人殺しに荷担したくないって気持ち、分からない訳じゃないわ。 名誉や誇りと言っても戦争は、結局は人殺しだものね。これまで必死で守ってきた命を自分で奪うような ことをするなんて、私もおかしいと思う。コルベール先生も、人殺しに慣れたら何かが壊れるって、 命に代えて教えてくれたし……。 でも……貴族には名誉が命よりも大事なものだっていう価値観も、分かってちょうだい。 何も名誉は、戦いと殺しのためにあるものじゃないの。祖国を守る、領民を守る、家族を守る、 生活を守る、それが名誉……そのために戦うのよ。命の奪い合いが目的なんかじゃないの。 それに、侵略者を追い詰めるためには、この戦はどうしても必要なものじゃない。アルビオンの 陰に隠れる侵略者を追い出したら、戦いも終わるし、平和も戻ってくるわ。ね、そう考えて、 思い直してちょうだい。これは平和を勝ち取るための戦いなのよ」 と、熱心に説得したものの……。 「……ごめん。やっぱり俺には、納得がいかないよ。平和のために、犠牲が必要なんて……」 才人は力なくつぶやき、ルイズから離れていった。 「……もう知らないッ! ご主人さまがここまでしてあげてるのに! もう勝手にしなさいよッ!」 遂にはルイズもへそを曲げ、才人から顔を背けた。 「おいおい……こんなので本当に大丈夫なのかね」 二人の様子を見守っていたデルフリンガーが大きなため息を吐いた。 吹雪はやんだが、空には厚い雲が覆い被さったまま。それは、ルイズと才人の行く末を 暗示しているようでもあった……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9156.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第五十話「白炎の超獣地獄」 ミサイル超獣ベロクロン 一角超獣バキシム 蛾超獣ドラゴリー 登場 年末のウィンの月の第一週、マンの曜日に、アルビオン大陸がもっともハルケギニア大陸と接近する。 その日に、トリステイン・ゲルマニア連合軍がいよいよアルビオンへ向けて出撃をするのだ。 既に魔法学院の男子生徒は軒並みトリステイン軍に従軍し、学院にいるのは一部教師と女子生徒、 ルイズの使い魔の才人という状態。 その才人とルイズもまた、連合軍出撃の日に学院から出立する予定だ。タルブ村から持ち帰り、 コルベールに修復してもらったゼロ戦で艦隊と合流することになっている。 が、しかし……その寸前となったところで、またしても彼らに侵略者の魔の手が襲い掛かる。 「アニエス……食堂の状況はどうなってるの?」 現在本塔を、魔法学院に駐留している十人ばかりの銃士隊が取り囲んでいる。本塔の食堂の入り口前では、 ルイズがアニエスに内部の状況を尋ねかけた。 先ほどまで寝静まっていた魔法学院の静寂は、突如として破られた。どこからともなく現れた メイジの一団が侵入し、学院を襲ったのだ。間違いなく、アルビオンからの刺客。彼ら侵入者は 瞬く間に残っている女子生徒たちや教師を捕らえ、食堂に集めて立てこもってしまった。 アニエスたち銃士隊と難を逃れたルイズ、才人はたった今、人質を奪い返そうとしているところである。 「学院の人間は、ここにいる我々と平民を除き全員人質として囚われてしまったようだ。 今のところ、賊は危害を加えていないようだが、それもいつまで続くものか分からん。 早急に手を打たねばならんな。……まずは賊と交渉を行う」 「アニエス、頼んだぜ」 学院の仲間の命の危機に、ルイズも才人も彼らの身を案じていた。二人に託されて、アニエスは 閉じた入り口から大声で中へ呼びかける。 「聞け! 賊ども! 我らは陛下の銃士隊だ! 我らは一個中隊で貴様らを包囲している! 人質を解放して投降しろ!」 はったりをかまして脅すが、食堂に立てこもる賊には通用しなかった。 「投降? 今から楽しい交渉の時間ではないか。さて、ここにアンリエッタを呼んでもらおうか」 「陛下を?」 「そうだ。とりあえず、アルビオンから兵をひくことを約束してもらおう」 賊の要求について、才人がルイズに小声で尋ねる。 「兵をひくって……今更できるのか?」 「普通なら、ないわ。でも、今は貴族の子女が何十人も人質にされてる。さすがに無視することは出来ないでしょうね」 アニエスが返答につまっていると、賊は怒鳴って急かす。 「五分で決めろ。アンリエッタを呼ぶのか、呼ばぬのか。五分たっても返事がない場合、一分ごとに一人殺す」 現在、賊に圧倒的有利な状況だ。時間もない。アニエスは判断に迷って、唇を噛み締める。 その時、誰かがアニエスを呼んだ。 「アニエスくん」 アニエスたちが振り返ると、コルベールが呆然とした様子で食堂をながめていた。 「先生! 捕まらなかったんですか」 「わたしの研究室は、本塔から離れているからね」 才人に、食堂をにらみつけながら答えるコルベール。更に、この場に二人の人間が追加される。 「はぁい、みんなそろって。大変なことになっちゃったわね」 キュルケとタバサだ。 「あんたたちも無事だったのね」 「タバサが異常にいち早く気づいてくれたお陰でね」 ルイズに返すと、キュルケはアニエスに申し出る。 「ねえ、銃士さん。あたしたちにいい計画があるんだけど……」 「計画?」 キュルケとタバサは、皆にその計画というものを伝えた。聞き終えたアニエスは、にやっと笑う。 「面白そうだな」 「でしょ? これしかないと思うのよね」 「確かに、いい計画ね。時間もないし、早速取り掛かりましょう」 ルイズたちは賛同するが、ただ一人だけ、コルベールは反対した。 「危険すぎる。相手はプロだ。そんな小技が通用するとは思えん」 「やらないよりはマシでしょ。先生」 キュルケが軽蔑を隠さずに切り捨てた。アニエスなどは、コルベールをはっきり無視している。 「あいつらはあたしたちメイジが他にいることを知らないわ。奇襲のカギはそこよ」 キュルケたちがコルベールを置いて、計画に取り掛かる。才人は若干コルベールに引け目を感じたが、 それでもルイズの後に続いていった。 食堂の内部では、中央に人質の生徒や教師、オスマンたちが後ろ手を縛られた状態で集められていた。 その周囲を賊が取り囲む。 その内、恐怖に耐え切れなくなったか、女子生徒の一人が泣き出した。その途端に、賊のボス、 “白炎”の二つ名を持つメンヌヴィルがギロリと濁った白眼をそちらへ向ける。 「静かにしろ」 と命ずるが、生徒は泣き止まない。そのためメンヌヴィルは近づき、杖を突きつけた。 「消し炭になりたいか?」 メンヌヴィルが本気だということが伝わり、女子生徒はひきつけを起こしたように泣き止んだ。 すると見かねたかのように、オスマンが口を開く。 「あー、きみたち。か弱い乙女に乱暴を働くものではないよ。交渉のカードが欲しいのならば、 このおいぼれだけにして、他の皆は解放してくれんかね」 と呼びかけると、メンヌヴィルは明らかに馬鹿にしたように笑い飛ばした。 「馬鹿を言え。じじい一人のために、アンリエッタが動くか。自分の価値を考えろ」 更に、こんなことまで言い出す。 「それに、人質は一人たりとも欠かす訳にはいかんのだ。オレのためにな」 「何? それはどういうことかね?」 賊の一人がメンヌヴィルを諌めようとする。 「隊長、それを今言うのは……」 だがメンヌヴィルは耳を貸さない。 「何、構わんだろう。遅かれ早かれ、こいつらは焼け死ぬのだからな」 そのひと言で、食堂内の人質は一気に騒然となった。メンヌヴィルは部下に脅しを掛けさせ、黙らせる。 「……どういうことかね? わしたちを人質に、兵をひかせるのではないのかね。殺してしまったら、 逆効果になることが分からんのかね?」 メンヌヴィルの真意を図りかねて問うオスマン。それに、メンヌヴィルは嘲笑を浮かべながら答えた。 「それはアンリエッタを呼び出すための方便さ。今回のオレの雇い主は最高なお方でね、 オレに魔法学院を中心に、好きな人間を好きなだけ焼いて構わないとおっしゃってくれたのだ。 せっかくの機会、ここのガキどもでは飽き足らん。一度国家元首を焼き殺してみたいと思っていたのだ」 さぞ楽しいことであるかのように、愉悦の笑みを満面に浮かべるメンヌヴィル。それを見て、 オスマンは彼の精神の正常を疑った。 「……きみは、そんなに人殺しが好きなのかな?」 メンヌヴィルは、自身に一切の疑問を挟むことなく肯定する。 「ああ、そうだ。あの肉の焼ける音と、人間が発する断末魔こそが、オレの心を何より癒してくれる。 オレにとっては何よりの享楽なのだ。早く、お前たちの死に際の鳴き声を聞いてみたい。二十年前のあの村以来、 久しく聞いていない絶叫の合唱をな」 何人かの女子が、メンヌヴィルの狂気に当てられて気を失った。だがメンヌヴィルは自分の世界に すっかり没頭し、一人語りを続ける。 「一番焼いてみたいのは、あの時の隊長どのなのだがなあ。所在が全然掴めんせいで、呼び出すことも出来ん。 隊長どのは今どこで何をしてるのやら。まだ生きているといいのだがな」 オスマンはもう、メンヌヴィルの言葉を聞いていない。アルビオン、ひいては裏にいる侵略者の意図を考えている。 メンヌヴィルが異常者であることはもう分かった。しかし、侵略者は何故こいつを送り込んで、 好きに殺戮を行わせようとしているのだ? 人質を取って連合軍の出撃を止めさせるのならば分かる。 しかし、殺してしまったら貴族たちの怒りを買い、ますます戦意を向上させてしまうのではないか。 戦争を煽るのが目的なのか? 仮にそうとしても、どうしてこんな回りくどいことをする。 戦争を起こしたいのならば、そちらから攻める方がずっと手っ取り早いはず。何故こちらの進軍を待っているのだ。 もしや……何としても連合軍をアルビオンに誘き出すのが目的か? だが、それにどのような 意図を抱いているのだ? 「五分たったぞ」 時計の針が動き、最初の要求から五分が経過したことを知らせた。メンヌヴィルは本当に、 人質を殺すために立ち上がる。生徒たちが震え上がる。 「わしにしなさい」 オスマンが言うが、メンヌヴィルは拒否する。 「あんたは交渉のカギとして必要だ。おい、誰がいい? お前らで選べ」 人質の間で犠牲者を選ばせる、あまりに残酷な質問。唖然として、誰も答えられない。 「わかった。じゃあオレが選ぶ。恨むなよ」 とメンヌヴィルが言った瞬間に、食堂に小さな紙風船が飛んできた。場違いな物体に、賊の視線が集まる。 その瞬間に紙風船は爆発。激しい音と光を放つ。中にはたっぷりと黄燐が仕込まれていたのだ。 これがタバサとキュルケの考えた作戦。紙風船で視線を集め、その瞬間に閃光で賊の目を 潰してしまおうという魂胆だ。 果たして作戦は成功し、賊のメイジが顔を押さえてうずくまった。 「うおおおおおッ!」 そして窓と扉を破り、才人やキュルケ、タバサ、アニエス、銃士らが飛び込む……そうしようとした。 しかしその瞬間に、才人たち全員に炎の弾が何発も飛んできた! 炎の弾は油断していた 才人たちの寸前で炸裂し、その際の衝撃で返り討ちにした。 「がはッ!?」 「サイト!」 直接の魔法攻撃ではないので、才人もデルフリンガーで吸い込めずに弾き返される。ルイズが声を荒げた。 「くッ……」 扉から飛び込もうとしたキュルケは、外に弾き出された際の衝撃で立ち上がることが出来なかった。 タバサは近くで、頭を打って失神している。 硝煙の中からメンヌヴィルが現れ、キュルケの前にそびえ立った。キュルケは落とした杖を 拾おうと手を伸ばすも、メンヌヴィルに踏みつけられてしまった。 「おしかったな……。光の弾を爆発させて視力を奪うまではよかったが……」 「どうして……」 どうしてメンヌヴィルだけ平然としているのか。その答えはすぐに分かった。メンヌヴィルの眼球には、 生ものの質感がない。作り物の飾りであった。 「オレは昔、目を焼かれていてな。光がわからんのだよ」 「じゃあ、どうして……」 目が見えないのならば、メンヌヴィルの正確な魔法攻撃はどういうことか。音の方向で 判断したにしては精密すぎる。 それについて、メンヌヴィルはこう説明した。 「蛇は、温度で獲物を見つけるそうだ。オレは炎を使ううちに、随分と温度に敏感になってね。 距離、位置、どんな高い温度でも、低い温度でも数値を正確に当てられる。温度で人の見分けさえつくのさ」 戦慄するキュルケ。火のメイジは数いれど、そんな人間がいるなんて話は聞いたことさえない! 「お前、恐いな? 恐がってるな?」 メンヌヴィルはキュルケの恐怖の感情を読み取って、愉悦に顔を歪めた。 「感情が乱れると、温度も乱れる。なまじ見えるより温度の変化はいろんなことを教えてくれる」 絶望的な状況下のキュルケに、メンヌヴィルはおもむろにメイスを兼ねた杖を向けた。 「嗅ぎたい。お前の焼ける香りが、嗅ぎたい」 杖から炎が噴出する。キュルケに打つ手は全くなく、覚悟して目をつむった。絶対的強者の 立場にあるメンヌヴィルの炎を、もう止めることは出来ない。 そう思われたが、メンヌヴィルの炎を、別の炎が押し戻した。それを肌で感じて、恐る恐る 目を開けるキュルケ。彼女が見たものは、 「……ミスタ?」 「わたしの教え子から、離れろ」 杖を構えて、自分の横に立つコルベールの姿であった。 その瞬間に、メンヌヴィルの様子が一変する。興奮し出したのだ。 「おお、お前は……。お前は! お前は! お前は!」 その時に、塔の外壁を回り込んで、アニエスとルイズに肩を貸してもらっている才人が ほうほうの体でやってきた。どちらも、メンヌヴィルの様子を訝しむ。 「何あいつ? 急にどうしたのかしら?」 「先生を向いてるようだけど……」 メンヌヴィルはルイズたちが来たことにも構わず、コルベールにのみ意識を向けていた。 「捜し求めた温度ではないか! お前は! お前はコルベール! 懐かしい! コルベールの声ではないか! まさかこんなところにいようとは!」 コルベールは固い表情のまま、メンヌヴィルをにらんでいる。 「オレだ! 忘れたか? メンヌヴィルだよ隊長どの! おお! 久しぶりだ!」 「貴様……」 「何年ぶりだ? なあ! 隊長殿! 二十年だ! そうだ!」 隊長殿? 誰もがコルベールとメンヌヴィルの関係を掴めない。あの温厚なコルベールと、 狂人メンヌヴィルとの接点を誰が想像できるだろうか。 「先生、どういうこと……」 才人のひと言を聞き止めて、メンヌヴィルは大笑いする。 「なんだ? 隊長殿! 今は教師なのか! 貴様が教師とな! いったい何を教えるのだ? “炎蛇”と呼ばれた貴様が……、は、はは! はははははははははははッ!」 散々笑った後、メンヌヴィルは場の全員に聞こえるように語った。 「説明してやろう。この男はな、かつて“炎蛇”と呼ばれた炎の使い手だ。特殊な任務を行う隊の 隊長を務めていてな……、二十年前は、ダングルテールという地方で女子供構わずに焼き尽くしたものよ。 そしてオレから両の目を……光を奪った!」 アニエスに、ルイズたちに衝撃が走った。 「う、嘘でしょう!? じゃあ先生が、アニエスが追ってた仇……!」 「先生が、まさかそんな……!」 現在のコルベールの姿と、アニエスが語ったような無慈悲にダングルテールを焼き払った 男のイメージは全く一致しない。 しかし……才人たちはすぐに、今のコルベールの纏う空気で、それが真実であることを理解させられた。 今のコルベールは、誰の目からも分かるほどの濃厚な殺気が、全身から発せられているのだ。 戦いを知らない者では絶対に出すことの出来ない殺気。 コルベールが突き出した杖の先端から、華奢な体格とは正反対の巨大な炎の蛇が躍り出た。 蛇は復活したメンヌヴィルの部下の杖を一瞬で灰に変えた。 呆然と自身を見上げるキュルケに、コルベールが尋ねる。 「なあミス・ツェルプストー。『火』系統の特徴をこのわたしに開帳してくれないかね?」 「……情熱と破壊が、火の本領ですわ」 「情熱はともかく『火』が司るものが破壊だけでは寂しい。二十年間、そう思ってきた」 コルベールは、いつもの声でつぶやいた。 「だが、きみの言う通りだ」 そう言った時に、コルベールとメンヌヴィルの決闘が始まった。 メンヌヴィルの発した炎と、コルベールの発した炎が相殺されて激しく爆発を起こす。 その瞬間にキュルケはタバサを抱えて走り出すが、食堂に潜むメイジが氷の矢で追撃する。 「させるかッ!」 そこに飛び込む才人。デルフリンガーで氷の矢を全て消し去る。そしてルイズとアニエスとの連携で、 メンヌヴィルの部下をたちまち殲滅した。ガンダールヴの力の前では、一端のメイジがたかだか十数人程度、物の数にならない。 しかし、そんなガンダールヴでもコルベールとメンヌヴィルの決闘には立ち入ることが出来なかった。 他の誰もが、二人を仇とするアニエスでさえ同じだ。それほどに激しい戦いであった。 火と火がぶつかり、二人のメイジが夜の闇に舞う。この苛烈な決闘と比べたら、かつての 才人とギーシュの決闘など子供のままごとに等しいだろう。 「隊長殿! 二十年前、あんたの炎に惚れ込んだオレはあんたを焼こうとして、負けた! オレの炎は負けた! しかし、今は違うぞ! 今のオレの炎は、昔とは比べものにならないものと なったのだ! 今度は、オレがあんたの肉を焼く番だ!!」 豪語するメンヌヴィル。実際、メンヌヴィルの炎はコルベールに劣らぬほどで、かつ状況はメンヌヴィルに 有利であった。夜の闇はコルベールの視界を制限するのに対し、温度でものを見るメンヌヴィルに そのハンデは存在しない。少しずつ、コルベールが押されていく。 「どうした! どうした隊長殿! 逃げ回るばかりではないか! うわはははははは!」 メンヌヴィルはその利点を活用して、闇の中を動き回る。コルベールはなかなか手出しできずに駆け回る。 その内に、身を隠すものが何もない野原まで誘き出された。 「最高の舞台を用意してやったよ、隊長どの。もう逃げられない。身を隠せる場所もない。観念するんだな」 コルベールから、闇の中のメンヌヴィルの姿は見えない。メンヌヴィルはコルベールの姿がはっきり見える。 絶体絶命の状況下で、コルベールは口を開く。 「なあメンヌヴィルくん。お願いがある」 「なんだ? 苦しまずに焼いてほしいのか? なに、あんたは昔馴染みだ。お望みどおりの場所から焼いてやるよ」 落ち着き払った声で、コルベールは言った。 「降参してほしい。わたしはもう、魔法で人は殺さぬと決めたのだ」 「おいおいボケたか? 今のこの状況が理解できんのか? 貴様のどこに勝ち目があるってんだ」 「それでも曲げてお願い申し上げる。このとおりだ」 コルベールは膝をついて頭を下げた。メンヌヴィルは軽蔑しきった声を上げる。 「オレは……、オレは貴様のような腑抜けを二十年以上も追ってきたのか……、貴様のような、能なしを……、 許せぬ……、自分が許せぬ。じわじわと炙りやいてやる。生まれてきたことを後悔するぐらいの時間をかけて、指先からローストしてやる」 「これほどお願いしてもダメかね」 「しつこいヤツだな」 メンヌヴィルは呪文を唱える。対してコルベールは哀しそうに首を振り、杖を振って小さな火炎の球を打ち上げた。 「なんだ? 照明のつもりか? あいにくとその程度の炎では、辺りを照らし出すことなど適わぬわ」 メンヌヴィルの言う通りであったが、火炎の球は照明などでは断じてなかった。 メンヌヴィルを確実に殺す兵器であった。 火が二つに、土が一つ。『錬金』により空気中の水蒸気を気化した燃料油に変え、空気と撹拌する。 そこに点火して、火球を一気に膨れさせる。巨大化した火球はあたりの酸素を燃やし尽くし、範囲内の生き物を窒息死させる。 それが『爆炎』と呼ばれる、必殺の攻撃魔法だ。 「がッ……!」 呪文を詠唱するため口をひらいていたメンヌヴィルは、灰の中の空気を全て奪われて、窒息した。 背後に倒れ、全く動かなくなった。 口を押さえて身を伏せていたコルベールは身体を起こした。 「蛇になりきれなかったな。副長」 「先生ー!」 『爆炎』が収まると、才人とルイズ、キュルケが駆け寄ってくる。あらかじめ、唇の動きで絶対に近づかないように 指示しておいたのだ。目が見えないメンヌヴィルは、微細な動きまでは気づくことが出来なかった。 「良かった、勝てたんですね」 才人は興奮しているが、コルベールは反対に沈んでいた。 「良くはない。結局、わたしは自身に掛けた禁を破ってしまった」 「……仕方ないですよ、相手が相手だったんです。それより、問題はアニエスのこと……」 ルイズが言及しようとした、その時、 「ははははははははははッ!」 突然、窒息死したはずのメンヌヴィルから笑い声が発せられた。コルベールはギョッと驚き、ルイズたちをかばう。 「さすがだ、隊長殿! ものの見事に出し抜かれた! 腑抜けといったのは取り消そう! あんたはオレよりずっと優秀な蛇だ!」 メンヌヴィルはゆっくりと身体を起こす。確実に生きている。 「馬鹿な! 確かに窒息した。今ので、人間が生きていられるはずが……!」 「『人間』はな! だが残念なことがある。さっき言っただろう。オレの『炎』は! 『昔』とは 『比べものにならないもの』になったのだと!」 メンヌヴィルが言外に語ることを察して、コルベールはまさか、と思った。 「人間の戦いは、残念ながらオレの負けだ。だが、これからが本番なのだ! 次は絶対に負けんぞッ! さぁ、来るがいい! 依頼主から授かった、究極の『炎』よ! この地を全て焼き尽くそうではないか!」 「グロオオオオオオオオ!」 メンヌヴィルが豪語すると、不意に獣の凄まじい鳴き声が響いた。ルイズたちはその方向を見上げ、驚愕する。 「か、怪獣が! いつの間に、こんなに近くに!?」 何と、魔法学院のすぐ側、一同のすぐ近くに、濃紺の巨体と後頭部、肩、背面にビッシリと 突起を無数に生やした巨大生物がそびえ立っていた。ルイズは怪獣と呼んだが、それを才人が否定する。 「ち、違う! あいつはヤプール人の生み出した怪獣兵器、怪獣を超えた怪獣……超獣だ! 超獣ベロクロン!」 ベロクロンにだけ驚いてはいられなかった。唐突に、夜空の一部がバリ―――ン! と 音を立てて粉々に『割れた』のだ。 「は、はぁッ!? 空が……割れた!? どういう現象!?」 魔法世界のハルケギニアといえども、『空を割る』ことは絶対に不可能。ルイズたちメイジは訳が分からなくなる。 「ギギャアアアアアアアア!」 そして割れた空の向こうに見える真っ赤な空間には、一本角を生やしたオレンジと青の体色が 派手な超獣が存在し、割れた空から地上へ降り立った。 「あいつは……超獣バキシム!」 「ギギャアアアアアアアア!」 相当の重量級なのか、バキシムが歩いた部分は地面が足の形に陥没した。 「ギョロロロロロロロロ!」 またも空が割れ、蛾と肉食獣とロケットを足したような巨大生物が出現する。これで三体目だ。 「超獣ドラゴリー! 何てこった……!」 戦慄する才人。魔法学院は一瞬の内に、三体もの超獣に囲まれてしまった! 『行けぇッ! 超獣たちよ! 人間どもを焼き払えぇッ!』 異次元空間では、メンヌヴィルの要請でハルケギニアに解き放たれた超獣たちに、ヤプール人が指令を飛ばしていた。 『クックックッ、人間どもめ、我らヤプールの誇る生体兵器、超獣に腰を抜かしているようだな。 しかし、これで終わりではないのだぞ』 ほくそ笑むヤプール。その後方には、巨大な人型の何かが直立していた。 『ウルトラマンゼロよ、早く出てくるといい。その時にこいつを送り出してくれる。貴様と我らの傑作、 異次元超人とどちらが強いか、確かめさせてもらうぞッ!』 ヤプールの背後の、戦国武将の兜の如き頭部と左腕に巨大なハサミを持った巨大超人が、緑色の両眼に光を灯した。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/cloud9science/pages/71.html
2007-08-26 X-ジャイロ 紙ジャイロ 作り方と投げ方 ダウンロード X-ジャイロ 東急ハンズでX-ジャイロというおもちゃを買いました(上の写真、右側)。これはプラスチック製のリングに金属の重りがついたもので、上手に飛ばすと180mも飛ぶ、優れものです。店頭の販売促進用ビデオがyoutubeにアップされていましたので、ぜひ動画をご覧ください。ものすごい飛びっぷりです。 通販サイトで購入も可能のようです。しかも東急ハンズより安い!orz 紙ジャイロ ペットボトルを輪切りにして重り代わりにビニールテープを何重にも巻いて自作X-ジャイロを作ることができます。しかしX-ジャイロやペットボトルジャイロは質量があって飛行速度が速いので、室内で遊ぶのは危険です。はるかに軽いつくりの紙ジャイロは室内で安全に遊ぶことができます。ぶつかってもぜんぜん痛くないので安全です。紙で作ったとは思えないようなすばらしい飛びっぷりです。 作り方は岐阜物理サークルで教わりました。 作り方と投げ方 Flying paper zylo B5のPDFファイルを開き、B5版のコピー用紙に印刷してください。 文字の印刷されていない部分を点線に合わせて半分に折り曲げます(下写真の左上)。さらにあと2回半分に折り曲げます(下写真の右上と左下)。これを、印刷面が外になるように筒状に丸めて1cmほど重ね、セロハンテープで固定します。親指と人差し指でぎゅっと抑えてきれいな円形に形を整えてください(下写真の右下)。 利き手の親指と人差し指・中指ではさむように持ち(下の写真を参照)、折り重ねたほうが前になるように投げます。投げるときは筒の中を空気が流れるように、また、親指が先に離れ、人差し指でスピンをかけるようにします。 ダウンロード B5版紙ジャイロの型紙ダウンロードはここから。印刷設定で用紙サイズをB5に設定してから印刷してください。 PDFファイルの表示と印刷にはAdobe Readerが必要です。お持ちでない方はこちらでダウンロードしてください。無料です。 B5版は大人の手に合わせたサイズです。小学生以下の子供にはA5版程度の大きさがいいです。もちろん新聞広告など、どんな紙でも同じように紙ジャイロを作ることができます。 実験クラブの担当で毎週ネタ探しに苦労しています。使わせてもらいます。 -- 泉 多恵子 (2008-06-25 20 22 07) しばらく前に、私のブログ「どろんこあそび」にコメントをいただいたままになっており、失礼いたしました。 いまさらですが、コメントを返させていただき、あらためてこちらを覗かせていただきましたら、興味深い記事が満載! 思わず、読みふけってしまいました。 今後も、楽しみにさせていただきます。 ありがとうございました。 //ameblo.jp/asadoro/ -- asadoro (2008-09-14 00 22 00) asadoroさん、コメントありがとうございます。 私はasadoroさんの、KAP(凧を使った空中写真)にとても興味を持ちました。 すごいですね。 -- yu-kubo (2008-09-14 19 29 35) とっても役に立ちました。 テレビでペットボトルでやっていたのが気になり 検索でたどり着きましたw まっすぐ前に飛ばすのが難しいですね。 -- swimmy (2010-07-03 20 30 02) swimmyさん、こんにちは。コメントありがとうございます。 投げ方の基本はサイドスロー。水平方向にリリースしてください。 動画のXジャイロの投げ方と同じです。 どんなことでもそうなんですが、やはり繰り返し練習することが必要です。 紙製なので剛性が足りず、Xジャイロのような飛びっぷりというのはムリなのですが、 その代わり室内では安全に遊ぶことができると思いますよ。 -- yu-kubo (2010-07-04 07 52 19) 質問なんですが、何でジャイロって飛ぶ んですか? -- ライオン (2010-07-26 13 16 58) ライオンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。 紙ジャイロが飛ぶのは誰かが投げたからなのですが、 聞きたいのはそんな事じゃないですよね。 丸めた紙の玉に比べて紙ジャイロは落下しにくいです。 地球が物体を引っ張る力を万有引力といい、 それに逆らって物体を持ち上げる力を揚力といいます。 紙ジャイロには飛行機の翼と同じで揚力が働いています。 図書館などに飛行機の仕組みを説明した本があると思います。 ぜひ読んでみてください。 -- yu-kubo (2010-07-27 09 00 28) なぜサイドスローたどよくとぶんですか? -- ライオン (2010-08-12 12 42 53) ライオンさん、こんにちは。 再度のコメントありがとうございます。 サイドスローだとよく飛ぶのはなぜなんでしょうね? 私もわかりません。 あれこれ試行錯誤した結果であって考えてたどり着いた結論ではないのです。 というわけでぜひ研究してみてください。 そして理由がわかったら教えていただけると嬉しいです。 -- yu-kubo (2010-08-12 21 33 48) a -- a (2023-07-02 13 37 23) 名前 コメント Copyleft2005-2007, yu-kubo.cloud9 all rights reversed
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6195.html
前ページ次ページゼロの使い魔様は根腐れしてやがる!! 根腐博士一行がハルケギニアにやってきたその日の夜、 ルイズの部屋では博士一行とルイズによる情報交換が行われていた。 「ふーん、それじゃああんた達は異世界から来たって言うの?」 「オフコース!!まさにそのとぉーーーり!!」 「それで、そのゴミバケツがタイムマシーンとか言う時間を移動する機械?」 「そのぉとーーり!!」 目の前で体を高速回転させてビシリと指を突きつけくる愉快生物ども(根腐博士とその愉快な助手たち)を 半眼で見ながルイズは膝で寝息を立てるゾーリンちゃんを撫で一つため息をついて言い放った。 「馬鹿じゃないの・・・そんなのある訳・・・」 その言葉は続かず・・・ ゲシッと博士にルイズは蹴られて、ガッポンン!!とタイムマシンの中に落とされたのでした 「百聞は一見にしかず!!いってらっしゃーい」 「きゃあああああ!!」 次の日の朝、黒髪のメイドが洗濯をしていると急に空が暗くなった 「あら?雨か・・・し・・・ら」 グォングォンと空に浮かぶ謎の穴、そしてそこから聞こえてくる 「きゃああああああ!!」 悲鳴!! 「「きゃあああああ!?」」 その頃、博士一行は・・・ 「うーん、朝はワインよりコーヒーに限るねA君」 「いやぁ、豪勢な食事ですねぇ博士」 「うん、美味しいですよ」 「あ、そこの恰幅のいい料理長さん、持ってるだけでで料理の味が抜群によくなる印鑑いかがです」 アルヴィースの食堂で堂々と食事をしていたりなんかしてたり 「あ、ああ!!あんtら達!!ないをあsdfghjkll;!!」 そこに怒り心頭で言葉も回らないルイズがやってきた。 大声でまくし立てるルイズを他所に博士達は今後の事について話し合う 「さて、せっかく魔法の国の学校に来たんだ、授業でも見ていくかね?」 「そうですね、たいして珍しくも無いですが」 「そうだね、よく見るしね ラスプーチンさんで」 「そこの黒髪のメイドさんお友達を紹介するだけで簡単に稼げる方法があるんだけど」 「え、本当ですか?是非」 「・・・話聞けよ・・・あと、シエスタ!!騙されないで!!」 「え、でもBさんが怪しくないよって」 「これでもかって言うほど怪しいわよ!!」 そうこうしている内にあっと言う間に授業の時間に、 ぞろぞろと引き連れてやって来たルイズを好奇の目で見る学友達、 授業が始まり、ミセス・シュヴルーズが使い魔の事に触れた時、小太りの男の子が 「おい!!ゼロのルイズ!!召喚できなかったからって平民引き連れてやってくるなよ!!」 と嘲笑し始めた。 「違うわよ!!かってにこいつらが来たのよ!!」 売り言葉に買い言葉、互いに罵りあう二人、そうこうしている内にシュヴルーズが錬金で二人の口に粘土を貼った。 「むがあぁ・・・」 ドゴオオオオオ!! 「ぐっはあああああ!?」 粘土を貼ったはずなのだが何故か巨大なゴーレムの腕が小太りの男の子を吹き飛ばす。 暫くの沈黙が教室を支配し・・・ 「それでは錬金の実技をミス・ヴァリエールお願いします」 「「「「「無視するんかい!!」」」」」」 この時、学友達の心が一つ(気絶している小太り一人除く)になった。 その後、例によって爆発して教室の片付けをルイズは言い渡されるのであった 「博士・・・ぼく達あんまり活躍してませんね」 「んーいいんじゃない 別に」 続く 前ページ次ページゼロの使い魔様は根腐れしてやがる!!